今後を見通すと、ウェアラブルと屋内測位の融合も有望だ。すでにメガネ型の端末の病院での使用実績が出てきているように、両手を使うものづくりの現場で重用されるようになると考えられる。
先日、セイコーエプソンが発表した新たなスマートグラス「MOVERIO」は、目の前に広がる大画面が特徴である。「Google Glass」や井口尊仁氏が開発する「Telepathy」など、多くのメガネ型端末は単眼で見るものだが、MOVERIOは両眼で画面を見るタイプで、実空間上に画像や動画などが重なって映し出される。筆者も先日試着したが、軽く、前面に広がる大画面には感動すら覚えた。これまで拡張現実(AR)は手で持った端末を通して見ていたが、目で見る実世界の上にさまざまな情報をハイブリッドに映すことが可能になる。
まだウェアラブル端末の屋外利用環境が整っていないこと、端末価格が割高なことから、当面は、屋内や移動車両内でのエンターテインメント利用が主となるだろう。屋内測位やウェアラブル端末の導入による業務効率化の実績が積み上がり、費用対効果が明確になってくれば、十分ものづくりの現場で使えるようになると考えられる。
以上のように、ビジネス上の発展が望まれる屋内測位だが、防災対策や災害発生時の情報提供・避難誘導手段としての期待も大きい。都市圏では、地震や火事、河川氾濫がおきた際の、地下空間の災害時マネジメントが長らく課題として挙げられてきた。特に東京や大阪の大規模地下空間では、エリアごとに管理主体が異なっている。
O2O(Online to Offline)や従業員管理での屋内測位技術は店舗単位での導入が基本となるが、施設単位、地下空間単位、エリア単位などでの利用が可能になること、非常時の一斉メッセージ送信なども望まれる。現在、さまざまな技術が提案されている段階であり、しばらく各社は技術動向を見つつ、目的に応じた技術が採用され、いずれ収斂(しゅうれん)していくことになるだろう。その中で、屋内測位を社会インフラ化していく取り組みも求められる。
- 高橋 睦(たかはし ちか)
- 野村総合研究所にて都市政策、地域情報化、都市の海外展開等に係る調査・コンサルティング業務を担当後、官民人事交流制度により国土交通省にて地理空間情報活用推進に係る業務に従事。 現在は野村総合研究所に復帰し、さまざまな社会課題におけるG空間やICT活用に関する調査、コンサルティングを主に活動している。
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