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アップル電子書籍訴訟の陰にアマゾンとオバマ政権のクサい仲 - (page 2)

三国大洋

2014-02-18 07:54

 さて、肩が凝る話はこれくらいにして。

 Packerによると、AmazonのJeff Bezos(創業者兼CEO)は、Kindleの事業立ち上げに際して、iPodとiTunesで音楽の分野を制覇したAppleから随分と刺激を受けていたらしい。iTunesの成功で、自社でのCD販売も減ったはずだから「危機感を覚えた」といった方がいいかもしれない。Kindle書籍の値付けも、そうしたAppleの影響が現れた部分の1つで、中味の分量や質に関係なく「一律9.95ドル」としたのは、iTunes Music Storeの「一曲99セント」に倣ったものだったという(その後、Amazonでもエージェンシーモデルに切り替えたせいで、価格がまちまちになった)。

 このエージェンシーモデルへの切り替えは、Amazonにとって面白いものではなかった。"Amazon unwillingly accepted"とあるから「しぶしぶ受け入れた」ということだろう。また、他の出版社の担当幹部が電話や電子メールでAmazonに通告するなか、律儀にシアトルまで説明に出向いたMacmillanの幹部は、Russ GrandinettiというKindle書籍担当の幹部からけんもほろろに追い返され、また翌日からしばらくの間、Amazonのサイトに表示されるマクミランの書籍からは「購入」のボタンが外されていたという(ユーザーからクレームが殺到し、結局1週間後にAmazon側が折れた)。

 こうした経緯があって、Amazonがこの件に関する不服を米公正取引委員会(FTC)に申し立て、それが後に米司法省(DOJ)によるAppleと出版大手5社を相手取った独禁法訴訟につながった。Packerの説明によると、そういうことらしい。

 この記事の中でちょっとキナ臭い感じがするのは、司法省を含む現政権とAmazonとの関係(距離の近さ)で、Packerは両者をつなぐ接点として、Amazonの社外取締役を務めるJamie S. Gorelickを挙げている。この女性は、クリントン政権時代に司法副長官(deputy attorney general)を務めた人物で、現司法長官のEric Holderとは「友人」とのこと――wikipediaの項目をみると、「1997年にGorelickの退任を受けて、Holderが副長官に就任」とある(Holderの現職就任は2009年3月下旬)。

 以前から消費税の問題などで各州の政府や連邦政府と軋轢があるAmazonのことだから、ワシントンでの影響力行使のために元政権関係者を社外取締役に据えるというのはとくに不思議なことではない。またMicrosoftやGoogle、Facebookなどがそれぞれ多額のロビー活動費を投じていることもよく知られている。いずれも合法な行為ということだろうが、では「合法ならいいのか」という倫理的な部分の疑問は残る。

 このGorelickの社外取締役就任が明らかになったのが、2012年2月の初め。そして、司法省がAppleなどを訴えたのが同年4月のこと。これでは、「iBook Storeの件でのDOJへの働きかけ」がGorelickのAmazonでの初仕事とみられても仕方あるまい。

 2013年7月末に、Barack Obamaがチャタヌガ(テネシー州)に新設されたAmazonの物流センターを訪れ、新規雇用――それなりの賃金が得られる「中流の仕事」("middle-class job")――創出のお手本としてAmazonのことを賞賛していた。

[President Obama Speaks on Jumpstarting Job Growth]

 Amazon物流センターでの派遣労働者の問題(不安定な雇用条件、低賃金ほか)などを知る人々からは、この訪問とスピーチに対して疑問を呈する声も上がっていた。たとえば下記のBusienssweek記事には、売り上げ1000万ドルあたりの雇用人数について「平均的な小売業が47人に対し、Amazonは14人」――つまりAmazonのほうが3倍以上も経営効率が高く、Amazonで1人雇用が生み出されるとその3倍も失業者が生まれる可能性がある、などという調査結果も引用されている。

 Amazonの物流拠点で「製造業の仕事(manufacturing jobs)」とか「高賃金(good wages)」などと見当違いなことを述べ続けるオバマの姿にどうしても違和感を覚えるが、この訪問の背景に、現司法長官とその元同僚であるAmazon社外取締役という線があると知って、いささか腑に落ちるものがあった。

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