人事制度を改革--ネットワンに見るワークスタイル変革の在り方

中城朋大 (インサイト)

2014-02-18 13:45

 誰もが今の働き方に“窒息感”を感じている。窒息感という表現は大袈裟かもしれないが、今までの働き方に疑問を感じていることは誰の目にも明らかだろう。問題は、どういう働き方があっているのか、それに向けてどのように変えていけばいいのかに対する現実解がまだ見えていないということだ。

 ネットワンシステムズは2月14日、同社が推進している、ワークスタイル変革に向けた人事制度改革の結果を発表した。

 同社は、2009年から時間外労働見直し、育児休業、短時間勤務拡大など、ワークスタイル変革に向けた取り組みを開始。2011年4月には、新しい人事制度改革の柱として「テレワーク」「フレックスタイム」「シフト勤務」を導入した。

 新制度は全従業員を対象にしており、毎年行う社内ワークスタイルアンケートで、課題や取り組みの効果を調査している。今回は10月下旬~11月上旬に調査し、回答者数は1875人となった。

 ワークライフバランスの実現度は、「実現できている」と「まあ実現できている」の回答の合計が48%に達するなど、一般的な調査の約30%を大きく上回ったという。個人のアウトプット(成果)の質についても「満足」と「やや満足」の合計が57%に達するなど、柔軟なワークスタイルにより成果が上がったとしている。時間外労働数と過重労働者の比率についても新制度導入以降、年々低下させている。

下田英樹氏
ネットワンシステムズ 業務管理グループ 人事課 シニアエキスパート 下田英樹氏

コミュニケーションが重視される

 業務管理グループ 人事課 シニアエキスパート 下田英樹氏は「導入直後から『通勤時間を他のやりたいことに使うことができる』『子どもを保育園に迎えに行きやすくなった』といった声が聞かれた。従業員満足度に関するアンケート結果では、私生活の満足度で良くなったとする回答が80%、仕事に対する満足度で良くなったが70%となった」と新制度の即効性の高さを説明した。

 業務の生産性にも好影響があるとし、「中断なく仕事ができるので時間外労働が減った」「仕事の計画を立てる意識が高まった」といった声も多かったという。実際、現在の仕事に対する生産性が良くなったという回答が54%、アウトプットに要する時間が良くなったという回答が34%に上っている。時間外労働については、導入初年度は前年比で売り上げが20%増加するなど業務量が増加する中にあっても、2%削減できたとした。

 ネットワンでは、新制度導入にあたりペーパーレス化や仮想デスクトップ基盤(VDI)の導入を先行して進めてきた。新制度の導入に対する不安や否定的な反応としては、「社外に紙を持ち出せないためテレワークが難しい」「新しいIT環境に馴染めない」などがあった。仕事の生産性が悪くなったとの回答が13%を占めた。

 新制度導入から2年半が経った現在、新制度は社内でよく活用されているという。勤務緒制度の活用度を聞いたところ、今年度は「活用できている」が18%、「まあ活用できている」が42%と6割に達するまでに活用がすすんだ。

 一方で「どちらともいえない」が17%、「やや活用できていない」が11%だった。このうち、活用が進まない理由を聞くと「リアルコミュニケーションの重要性、効率性の重視」「他者、周囲への配慮」がそれぞれ1位、2位となった。

 下田氏は、「(新制度を)活用できていないという回答を探ると、導入直後のように新しい環境に馴染めないというものよりは、コミュニケーションをさらに重視、周囲とコラボレーションを図りたいといったように、これから活用を図りたいという内容に変化していることがわかる」と取り組みの進捗を評価した。

 制度運用での工夫点として、下田氏は次のように話した。

 「マネジメント層からよく寄せられた不安は、『見えないところでの仕事をどう評価していいのか分からない』というものだった。一方、従業員の不安は『職場にいないと上司がよく思わないのではないか』だった。こういったネガティブな意見をひとつひとつ潰していくために、ガイドラインを作成した」

 ガイドラインとしては、たとえば「テレワーク制度ガイドブック」がある。ガイドブックでは、従業員が戸惑う3つのキーワードとして、「コミュニケーション」「評価」「時間管理」を挙げ、コミュニケーションでは、マネージャーに対して「アサインの仕方」「求めるアウトプットの明確化」「納期締め切りの伝達」「フィードバックの徹底」を決めている。

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