人事制度を改革--ネットワンに見るワークスタイル変革の在り方 - (page 2)

中城朋大 (インサイト)

2014-02-18 13:45

 ポイントの1つは、上司のマネジメント責任を明文化することにある。出席してほしい会議がある場合やチームの運営に支障をきたす場合は、テレワークの日を変更できる。急なトラブルや会議が発生した場合は出社を命令できる。事前申請や報告がない場合はテレワーク利用の停止も可能だ。これにより、マネジメント層の不安を和らげるという。

 もう1つのポイントは、テレワークなどを利用する従業員の自由度を高めることだ。テレワークを利用する際は前日までに上司にメールで申請しておけば、勤務開始時刻を報告する必要はない。勤務終了もメールで報告し、確認のフィードバックを得るだけで良い。スケジュールはチーム内で共有しており、テレワークを誰が行うかチーム内で調整できるようにしている。

ワークスタイルの沿革 ネットワンが進めてきたワークスタイルの沿革
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 「テレワークでは、リアルなコミュニケーションが不足すると思われがちだが、情報の不足をリアルなコミュニケーションで補おうとするため、コミュニケーションはむしろ密になるケースもあった。制度を推進するためには、ビデオメッセージや社内報を使った啓発活動を根気強く行っていくことが大切だ」(同氏)

 それぞれの制度は、以下のような仕組みになっている。

 テレワーク制度は、対象者を2つに分類できる。

 1つ目は、時間を含めた自己管理ができており、テレワーク時の成果を提示して、それを実行できる従業員。経営陣から新入社員まで、すべての従業員を対象に選ばれる。もう1つは、テレワークを臨時で利用できる従業員。災害や生活事情、交通事情などから出勤が難しい場合に備えたもので、業務の非効率さを削減することが目的だ。

 在宅勤務の場合、利用単位は1日か半日で、利用回数に制限はない。時間外労働は原則禁止だ。フレックスタイム制度は、非管理職の従業員を対象としており、コアタイムは10~15時。「1日あたり7.5時間」×「1カ月の労働日数」で計算する。

 シフト勤務制度は、顧客のニーズによって業務上の必要性が出た場合の夜間勤務などに使用される。また仕事と家庭の両立を図るため必要と認められた場合に使用できる。

時間外労働の削減へ

 下田氏によると、新制度導入の背景には、「成果創出をもっと加速する」「顧客と従業員のニーズに対応する」「過剰労働を削減する」の3つがあったという。1つ目の成果創出の加速は、同社の目標である営業利益率10%達成に向けて一人ひとりの生産性を向上を図るもの。

 2つ目の顧客と従業員のニーズへの対応は、一人ひとりが仕事の在り方によって勤務時間や勤務場所を選択できるワークスタイルを作ること。3つ目の過剰労働の削減は、行政への対応や社員のメンタルヘルスケアをすすめるもの。

 これを実現させるために、仕組み(制度)から変えてしまう、自らモルモットになり変化を起こしてみるという人事戦略をこれまでに実施してきた。

 今後人事部が重視していく指標としては、「顧客満足度のさらなる向上」「多様化する従業員ニーズへの対応」「時間外労働の時間数削減」を挙げた。

 1つ目の顧客の満足度のさらなる向上では、課題となっている訪問回数や対応時間について、テレワーク制度やフレックスタイム制度で時間を有効に活用していく。2つ目の多様化する従業員ニーズへの対応では、仕事のやり方を複線化し、65歳まで長く社員を惹きつけられる会社を目指す。最後の時間外労働の時間数削減では、従業員1人あたりの時間外労働数と過重労働者の比率をさらに削減していく。

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