“新幹線品質”が当たり前--サイボウズが強化するクラウド事業の要諦

齋藤公二 (インサイト)

2014-02-19 15:48

 サイボウズは2月17日、2013年12月期の決算事業説明会を開催。2月13日に公表した連結決算を踏まえ、2014年の活動方針などを説明した。2013年に好調だったクラウド事業を強化するため、2014年はクラウドに強いシステムインテグレーター(SIer)との協業、大規模組織への提案強化、セキュリティやインフラ基盤の信頼性向上の3つに注力する。

 サイボウズは2012年12月期から決算期を1月末から12月末に変更。そのため2012年12月期は2~12月の11カ月の変則決算となっている。同社の2013年12月期は、売上高が約10億円増の51億9700万円(前年同期比で26%増)、営業利益が2億600万円減の2億8800万円(前年同期比で42%減)、経常利益が2億3200万円減の2億6400万円(前年同期比で47%減)の増収減益となった。

青野慶久氏
サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏

 減益の要因は、下期にクラウド関連サービスの開発や広告宣伝を行ったためで、「10年先を見て利益を削って投資する方針」(代表取締役社長の青野慶久氏)であることを強調した。このため、2014年12月期の業績予想では売上高が3.9%増の54億円だが、営業利益や経常利益、当期純利益をゼロと異例の数字にしたことも、積極的な投資姿勢を示したものだという。

 「AmazonやSalesforceのようなクラウド事業者は、利益を出さずに赤字のまま拡大している。それに対抗していかないといけない。現預金は35億円あり、財務的に安定している。このタイミングでのチャレンジであることをご理解いただきたい」(同氏)

 2013年の事業の概況としては、クラウドサービス「cybozu.com」の有料契約者数が2014年2月に6000社を突破するなど好調だとした。売上ベースでみると、パッケージが2012年の38億円から43億円に伸びる中、クラウド事業(cybozu.com)は2億5900万円から8億9700万円と3倍に伸びた。直近の売り上げは月間で1億円を超えており、年間で12億円は達成できる見込みだという。

 2013年の取り組みとしては、エコシステムの推進、継続的な機能改善、信頼性の強化の3点に取り組んできたことを振り返った。

 エコシステムでは、開発者向け技術情報提供サイト「cybozu.com developers」を開設し、JavaScriptなどでのカスタマイズ機能の拡充やAPI情報を広く公開した。他社システムとの連携を推進し、業務アプリケーションのプラットフォームであるPaaSの「kintone」との連携策を数多くリリースした。

 たとえば、応研「大臣」シリーズ、アプレッソ「DataSpider Servista」、OBC「商奉行・蔵奉行」シリーズ、日本オプロ「OPROARTS」、オープンストリーム「Biz/Browser」、ウイングアーク「SVF」、OSK「SMILE BS」などだ。

 kintoneの導入事例としては、インテリア雑貨ブランド「Francfranc」を展開するバルスがExcelで行っていた購買部門の発注残管理をkintoneに移行し、DataSpider Servistaを使って基幹システムと連携させている事例を紹介した。

 2つめの継続的な機能改善については、グループウェアの「サイボウズ Office」でユーザーごとに利用するアプリケーションをカスタマイズできる機能、大規模環境向けグループウェアの「Garoon」でモバイル管理機能、ソーシャル機能、ビジネスインテリジェンス(BI)ダッシュボードなどを追加したことを説明した。2013年の製品リリース回数は計158回にのぼったという。

 3つめの信頼性の強化については、11月にクラウドサービスの未知の脆弱性発見に対し、総額300万円の報奨金を支払うイベント「cybozu.com Security Challenge」を開催したこと、各クラウドサービスの運用実績を公表し、多くのサービスが99.99%級を実現していることをアピールした。青野氏によると、稼働率の高さは障害から自動復旧するプログラムの成果だという。

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