ソフトウェアの切り口から、クラウドサービスにおいてこれだけのポートフォリオを持つのは、IBMならではといえる。とはいえ、特にPaaSは今後、クラウドサービスの中で最も激戦区になる分野とみられるだけに、IBMが引き続き確固たる存在感を示すことができるかどうか、注目しておきたい。
「ICTはもっと人の活動する場に入り込んで、積極的に支援していくものであるべきだ」 (富士通研究所 沢崎直之 ヒューマンインタラクション研究部 部長)
富士通研究所が先ごろ、保守作業などの現場向けにNFC(Near Field Communication)タグリーダとジェスチャ入力機能を備えたグローブ型ウェアラブルデバイスを開発したと発表した。同社ヒューマンセントリックコンピューティング研究所のヒューマンインタラクション研究部 部長である沢崎氏の冒頭の発言は、その発表会見で、開発における基本的な取り組み姿勢を語ったものである。
富士通研究所 ヒューマンインタラクション研究部 部長 沢崎直之氏
同社の説明によると、開発のきっかけとなったのは、近年、スマートフォンやタブレットなどの端末を用いて作業記録の電子化や作業効率の向上など、作業現場を支援する試みの中、現場によっては手袋の装着や手の汚れにより端末の取り出しや操作が難しいなど端末の利用が向かない場合や、操作のために端末を見るなど作業が中断してしまうという課題を抱えていたことにある。
そこで、今回同社が開発したグローブ型ウェアラブルデバイスを用いれば、物に触れるという自然な行動をきっかけに作業手順などの情報が提示され、作業結果もジェスチャで入力できるため、業務の流れを滞りなく進めることができるようになるという。
また、このデバイスとヘッドマウントディスプレイを組み合わせることで、例えば、コネクタや作業パネルなどの作業対象にタッチして作業指示を入手し、簡単なジェスチャで作業結果を入力するような製品やサービスが構築でき、作業の効率化や作業ミスの防止が期待できるとしている。
同社では今後、実証実験などを経て、2015年度中の実用化を目指す構えだ。
ウェアラブルデバイスをめぐっては、眼鏡型のスマートグラス、腕時計型のスマートウォッチ、腕や服などに身につけて健康を管理できるモバイルヘルスケア端末など、さまざまなものをIT関連各社が開発中だ。
ただ、富士通研究所が今回発表したのは、そうしたコンシューマ系のものではなく、業務支援を目的としたデバイスである。この点について、沢崎氏は「当社ではまず課題が明確でニーズの高い業務支援系から取り組むことにした」という。考えてみると、汎用的なウェアラブルデバイスの使い方がまだはっきりとしていない中で、ニーズのある業務支援系から取り組むのは手堅いかもしれない。要素技術は応用が利くので、同社にはぜひとも汎用デバイスにもチャレンジしてもらいたい。