「デイリーアクティブユーザー数(DAU)が3億2000万人を超えるサービスを、わずか32人のエンジニアで動かしている」という点にはDarling FireballのJohn Gruberなどが着目しているが、そういう際だった少数精鋭主義も“超効率経営(lean operation)”の実現に寄与しているのかもしれない。同社の“質実さ”を物語る逸話の中には「オフィスの入っていた建物に長い間看板もつけなかった」というのもある。
メディア(報道機関)の利用についても同様の逆張りぶりで、創業者2人の考えは一言で言うと“時間の無駄”ということらしい。VCのGoetzは2人から「自分たちの代わりに記者と話をしてくれ」と頼まれて驚いたことがあるという(「話をするより、モノを作っている方が面白いから」というのが2人の言い分)。
Jack Dorsey(Twitter、Square)やSean Parker(Facebook、Napster)をはじめとして、ロックスター並みの注目を集める(メディアの使い方がうまい)起業家や経営者が目立つ中、こうした“職人気質”の技術者が大きな成功を手にした、というのもなんだか小気味よい。
このところ、シリコンバレーやベイエリアのIT関連のニュースというと、各社の事業や技術自体についてのものよりも、業界周辺で生じている社会的な問題――サンフランシスコの地価高騰に代表される貧富の格差拡大などの方目立っている印象がある。また、宝くじに当たるような形で成功を手にした起業家や経営者にしても、“何不自由ない育ち”という言葉が真っ先に思い浮かぶような人々が中心だった(FacebookのMark ZuckerbergやSheryl Sandberg、そしてInstagramのKevin Systromのように)。
そうした中で“浪花節”とか“波瀾万丈”といった言葉も想起させるWhatsApp創業者らの物語――「2人とも、かつてFacebookの求人に応募し、断られた経験がある」といったオチさえついている――、中でも特に逆境からスタートしたJan Koumの話は、なおさら強い印象を残すものと感じられた次第。
(敬称略)
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【参照情報】
- Four Numbers That Explain Why Facebook Acquired WhatsApp--Sequoia Capital
- Exclusive: The Rags-To-Riches Tale Of How Jan Koum Built WhatsApp Into Facebook's New $19 Billion Baby--Forbes
- WhatsApp: The inside story--Wired UK
- In WhatsApp Deal, Sequoia Capital May Make 50 Times Its Money--NYTimes
- Sequoia Capital Takes Victory Lap After Facebook’s $19 Billion WhatsApp Deal--WSJ