大量のデバイス活用でセキュリティが課題に
IoTのように、大量データがあり、なおかつその量やピークを予測しにくいものの場合、クラウドで実現するのが最適と考えられる。
そうなると、IoTのプレーヤーとして競合するのは、パブリッククラウドのサービスを提供するという意味でAmazon Web Services(AWS)ではないか、との問いに「Amazon Web Servicesを具体的な脅威とはまだ考えていません。スタートアップサービスならいいのかもしれませんが、まだ顧客からもAWSの名前は聞こえてきません。IoTを活用するサービスは、企業にとってはビジネスの差別化を目的にするものが多い。その際、パブリッククラウドの制約の中で競合他社に勝っていけるのか。そう考えると、IoTのプラットフォームは、パブリックよりはプライベートクラウドに入れておくべきものではないでしょうか」と桐生氏は言う。
その上で、プラットフォームとして気を付けなければならないのは、十分な拡張性を持っていることだと指摘する。アプライアンスのようなものであっても、アーキテクチャが一貫していて将来的な拡張性が確保されているかといった点は十分に考慮する必要がある。アーキテクチャがスケールアウトに対応していないと、デバイスが増え、データも増えた際にビジネスチャンスを逃しかねないからだ。
IoTの国内導入事例
もう1つ気になるのが、IoTのセキュリティである。PCをクラッキングされ、スパムメールの発信元にされることなどへの対策は、セキュリティベンダーのソフトウェアでも対策できるし、他にもさまざまな対策方法がある。しかし、センサやスマートデバイスのセキュリティ対策は、現時点では簡単に実現できない。エンジニアがセキュリティを考慮したプログラムコードを、状況に応じて書くことしかできないだろう。デバイス側でも、エンタープライズレベルの開発スキルが求められるということだ。
さらに今後、個人情報など重要性の高いデータがIoTの技術で大量にやり取りされる時代がやって来る。その際に、きめ細かいアクセス管理やデータ保護が可能なのか。残念ながら、フルスタックでそろえているオラクルでも、一貫した完璧なセキュリティ機能を現時点で提供できているわけではないようだ。
日本オラクル ソフトウェアライセンス事業製品事業統括 Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの伊藤敬氏
とはいえ、「つながっている情報をどう処理するか、全体を1つのサービスにしていく方向で製品を提供します」と杉氏。IoTにおいても、エンタープライズのソフトウェアベンダーとしてのドメインを変えずに、信頼性やセキュリティを十分に確保できる仕組みを提供していくと話す。
セキュリティ面などの課題はあるものの、確実にIoTは普及するだろう。日本オラクル ソフトウェアライセンス事業製品事業統括 Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネジャーの伊藤敬氏は「今はまさに花火が上がっている状況です。その中で、製品がすべてそろっているのがオラクルだと思います」と言う。
実際にIoTを検討する顧客からは、デバイスサイド、サーバサイド両方の話を一度に聞きたいという要望も増えているそうだ。すべてがそろっている優位性を、どこまで伝えられるのか。それが導入企業の興味の方向性であり、オラクルのこの領域での成否を左右する要因になりそうだ。
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