松岡功の一言もの申す

知られざる「Windows Azure」の戦略転換

松岡功 2014年03月04日 12時00分

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 米Microsoftがこのほど日本国内にデータセンターを設けて増強を図ったパブリッククラウドサービス「Windows Azure」。その過程には、知られざるパートナー戦略の転換があった。

Microsoftと富士通の“特別な関係”

 日本マイクロソフトが先ごろ、Windows Azureのためのデータセンターを国内に開設したことを発表した。その内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは、今回の発表に至るまでの過程で、MicrosoftがWindows Azureのグローバルなパートナー戦略を大きく転換した知られざる動きに注目し、そこからWindows Azureに込めた同社の野望に迫ってみたい。

 まずはその戦略転換を象徴した動きについて紹介しておこう。日本マイクロソフトが国内でのデータセンター開設を発表したのと同時に、富士通がMicrosoftとの連携強化に基づくクラウドサービス「FUJITSU Cloud PaaS A5 for Windows Azure」を提供開始すると発表した。

 これは、富士通がこれまで国内の自社データセンターから提供してきたWindows AzureベースのクラウドサービスをMicrosoftのデータセンターに移設し、サービスとしてリニューアルしたものだ。富士通ならではのさまざまな付加価値サービスを用意しているが、ミソとなるのは、Windows Azureの利用料金が日本マイクロソフトと同一価格であるということだ。こうした“特別な関係”がどうして生まれたのか。

 遡ってみると、MicrosoftがWindows Azureのグローバルなパートナー戦略として当初進めていたユニークな協業形態に起因している。ユニークな協業形態とは、MicrosoftがWindows Azureで富士通、HP、Dellと戦略的提携を結び、同サービスを運用できるシステム基盤を開発するとともに、3社のデータセンターからそのシステムを活用したクラウドサービスを提供できるようにしたことだ。

 Microsoftにすれば、Windows Azureの運営そのものを委託する格好で、3社のグローバルなビジネス展開力を借りて、同サービスを一気に普及させたいという思惑があったようだ。3社の中でも、MicrosoftはHPやDellに先行して、富士通との協業サービス展開を2011年6月に発表。同年8月から富士通の国内データセンターから提供されてきた“富士通版Windows Azure”には多くの顧客企業が名を連ねている。

Microsoftが戦略転換した理由

 ところが、Microsoftは2013年後半、この協業形態を転換。運営委託の協業形態を取りやめ、Windows Azureはすべて自前のデータセンターで運営する形にした。結局、HPとDellとの協業は何も進まないまま消滅したが、富士通がすでに提供しているサービスについては前述した形になったわけである。

 今回の国内データセンター開設の発表会見に伴って来日したMicrosoftのWindows Azure事業責任者であるゼネラルマネージャーのSteven Martin氏に戦略転換の経緯について聞いてみると、次のような答えが返ってきた。

 「当初、運営委託の協業を模索したのは、パートナー企業で主体的に事業を進めたいという要望が強かったからだ。しかし、その後Windows Azureそのものの事業規模を拡大して経済性を追求していくためには、当社が主体になってデータセンターを拡充し、パートナー企業には、その基盤を利用して連携あるいは付加価値サービスを広げていってもらう方が市場のニーズに合致していると判断した。富士通との関係もそうした流れの中で進化し、今に至っている」

  Martin氏は、戦略の“転換”ではなく“進化”だと言いたげだ。見解が分かれるところだが、その意味合いがどうというより、この動きで肝心なのは、なぜMicrosoftは自前のデータセンターでの運営にこだわるのか、だ。Martin氏が言うように「Windows Azureそのものの事業規模を拡大して経済性を追求していく」という目的もあるだろう。最新技術を迅速に適用できるなどのメリットも、もちろんある。

 ただ、ビジネスの観点から大きいのは、パブリッククラウドならではの特徴で、顧客のデータを自前のデータセンターで管理することで顧客と直接コンタクトを持てるようになる点だ。すなわち“顧客の囲い込み”をガッチリできるわけである。Microsoftの大いなる野望はまさにここにあると筆者は見ている。

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