「すべての電力の3、4割をITが消費する時代が来る」
エネルギー管理機器などを提供するフランスのShneider Electricで、アジア太平洋と日本を担当するシニアバイスプレジデントを務めるPhillippe Arsonneau氏はこう話す。「今は7、8%くらい」(同)であることを考えると非常に大きな割合と言える。
ITをはじめとしたエネルギー需要は今後さらに増えることが見込まれる一方で、環境への配慮は世界的な視野でますます求められている。「需要は倍増するのに二酸化炭素(CO2)排出量は半減が求められている」とArsonneau氏は話す。
アジア太平洋と日本を担当するシニアバイスプレジデントを務めるPhillippe Arsonneau氏
クラウド、ビッグデータ、モバイル、ソーシャル、Internet of Things(IoT)など、ITを前提にした大きな波が押し寄せる中、それを支える電力などのエネルギーについて、じっくり考える必要がある。
特に今後は、クラウドの進展やアウトソーシング活用の流れにより、コンピューティング環境がこれまで以上にデータセンターに集まると予測されている。ハードウェアとソフトウェアの両面から、より効率的にデータセンターを構築、管理していく必要が出てくると言える。
外部のデータセンター利用を前提にした考え方が普及したことで、「ビジネス目的でデータセンターを見る企業が増えてきた」(同氏)という。これにより、情報通信企業などがデータセンタービジネスに参入するようになり、競争も激化してきた。
Schneiderは機器の冷却装置をはじめ、配電や無停電電源装置(UPS)、空調、ラックなどデータセンターの管理のために必要なハードウェアやソフトウェア、運用サービスを1つのシステムとして統合して提供している。IT機器以外の製品の進歩も加わり、データセンター管理全体の効率性を上げることに成功しているという。
運用効率指標の「PUE」を低減
シュナイダーの水冷式冷却システム
Arsonneau氏は、データセンターの運用効率に関する注目すべき指標として電力使用効率(Power Usage Effectiveness:PUE)を挙げる。分母はIT機器による消費電力、分子はデータセンター全体の消費電力全体だ。サーバやストレージ、スイッチ、管理用端末などを含む分母のIT機器消費電力に対して、分子はIT機器のものに加えて空調装置、電力設備、照明装置、監視装置などのコストも含めた値だ。
優れたデータセンターは、空調などIT機器以外の消費電力が低いほどPUEは小さくなり、小さいほど効率的と判断される。例えば、IT機器100ワットに対して、分子が170であればPUEは1.7ということになる。
大手データセンターで、1.6~1.8といった企業が多いようだ。Arsonneau氏は「われわれの顧客には1.3~1.5に抑えている企業が多い」とし、同社のデータセンター管理サービスが、IT以外の機器の消費電力を抑えることに貢献するとアピールする。
「初期コストはかかるが、電力消費の効率性の高さなどにより、3、4年あれば投資を回収できる」(Arsonneau氏)
今後の方向性として“予測、予知”をキーワードに挙げる。消費電力やバッテリの残量などさまざまな情報を抽出し、ビッグデータとして解析し、故障などのトラブルを事前に検知して回避したり、原因の所在を切り分けたりといったことをできるようにしている。
IoTやM2M(Machine to Machine)などの動きで、機械同士がデータをやり取りするようになることで、データセンターの管理もさらなる効率性向上が実現していく可能性があるとArsonneau氏は指摘した。
InfraStruXure InRow RCの冷却の仕組み