朝日新聞社と博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂は協力して、ウェアラブルをテーマにしたカンファレンス「Wearable Tech Expo in Tokyo」を3月25~26日に日本で初めて開催する。
このカンファレンス開催の経緯や意義、見どころなどについて、朝日新聞社のメディアラボ室長である高田覚氏、朝日新聞社のメディアラボプロデューサーである竹原大祐氏、博報堂DYメディアパートナーズのビジネスインキュベーションセンター ビジネスディベロップメントディレクターである上路健介氏に話を聞いた。
--朝日新聞社では新しいメディアのかたちにチャレンジするために、2013年に「メディアラボ」という組織を発足させました。今回のWearable Tech Expoもこの組織が原動力になっているそうですが、まずはメディアラボの取り組みから教えてください。
高田氏:朝日新聞社は135年の歴史を持つ信頼されるメディアとして評価されています。紙の新聞だけではなく、若い人を中心にさまざまな情報の接し方が広がっており、デジタル革命、モバイル革命の中で新しいメディアがどんどんでてきている中で、紙とデジタルを大切にしながら新しいメディアや新しい情報の発信の仕方、新しいサービスにチャレンジする組織として、2013年6月にメディアラボは発足しました。
木村伊量社長が2013年1月に実験工房として、思い切った挑戦ができる組織を作ろうということを宣言し、できた組織です。本格的なスタートは2013年9月からですが、新規事業を開発するというミッションで、その前提として世の中で起きている最先端のテクノロジの動きや、新しいビジネスモデルを研究しながらチャレンジしていくということです。朝日新聞として、新規事業の開発に専従する組織として立ち上がったのです。
--スタッフは何名いるのですか。
高田氏:室長以下、19名います。1人は海外で新しいビジネスモデルを探るというミッションでNY市立大学に留学していて、東京のオフィスには18名います。朝日新聞全体としては年齢層が高くなってきていますが、このメンバーの中には20代も3人いて、新規事業にふさわしいメンバーが活動しています。
--もう少し具体的には、どんなことに取り組んでいるのでしょうか。
高田氏:自分たちの手足をあまり縛らずに、いろいろな可能性にチャレンジしようということで、もちろん本業に近い情報発信という面ではメディアに近いことが中心になりますし、最近では映画の感想やレビューをシェアするサービス、アプリ「Filmarks」などを展開するつみきに出資したり、まだ世間に公表していない中でもいくつかベンチャー企業と一緒に事業を展開したりしています。朝日新聞の本業に近い部分では、新聞を読むような中高年の方を中心にしたビジネスや朝日新聞として強みのある教育や健康医療、環境分野といったところで新しいビジネスができないかという面でも挑戦しているところです。
--2014年に入ってからは、メディアラボを中心にさまざまなイベントやカンファレンスが組まれています。
高田氏:朝日新聞社として、オープンイノベーションを展開していきたいということで、外部の方がたとつながることを考えています。大きく「未来メディアプロジェクト」を設定して、新しい動きを展開しています。すでにMITメディアラボとのシンポジュウムを実施しており、「データジャーナリズム・アイデアソン、ハッカソン」も展開しました。こうした一連の動きの1つとして、最先端テクノロジに挑戦するということで、このたび「Wearable Tech Expo in Tokyo」を開催します。
--開催の経緯は?
竹原氏:メディアラボができて間もないころ、どういう取り組みをしていくかを考えていました。僕はアイアンマンという映画が大好きで、主人公のトニー・スタークという社長がパワードスーツを着て活躍するというお話です。あの世界のトニー・スタークがメディアを創ったらどうなるだろうか、ということを話ながら実際のプロダクトを作ってみようかという話にもなりました。
映画を見ながらいろいろと話が盛り上がったのですが、ちょうど博報堂DYメディアパートナーズのほうでもそのような話があって、これは一緒に何かやってみようということになったのです。当初は、「スタークチーム」と勝手に呼んでいたのですが、ここのメンバーがそのままこのイベントのメンバーになりました。僕はドラゴンボールも非常に好きで、特にその中に出てくるスカウターが好きで、どうしてもすべてにおいてこうした“ウェアラブル”視点が入ってしまいます。これが、はじめのきっかけです。
朝日新聞として見ると、ウェアラブルになってくるともっと人に近づく情報摂取になると考えています。そうなると、これまで以上に信頼性が必要になるでしょう。この情報は、そのまま摂取していい情報なのだろうかと。クラウドにあるビッグデータを含めて、情報が五感を行き来するときに、安心で安全な情報やデータをジャーナリズム以外にも、ウェアラブルだからこそできる情報産業として届けたいと思っています。こうした挑戦のきっかけとして、今回のイベントがあるのです。