米Dellは3月6日と7日、本社のあるテキサス州オースティンで、ワークステーションに特化したプレスイベントを開催した。ここでDellは、ワークステーション分野での戦略として仮想化を全面的に打ち出し、迅速に実装できるリファレンスアーキテクチャを発表した。
また、強化中のノート型ワークステーションではエントリ機種も発表、ライバルHewlett-Packardから首位奪還に向けて攻勢に転じた。
ワークステーションにもモバイルと仮想化の波

ワークステーションを含むエンドユーザーコンピューティング事業部トップのJeff Clarke氏。17年前に創業者のMichael Dell氏とワークステーション分野への進出を決めた当事者という
イベントのメインとなったのは仮想化だ。クラウドの波はサーバやデスクトップ側では広まっているが、CAD、グラフィックデザインなど用途に特化したコンピュータであるワークステーションの領域はまだ開拓が進んでいない分野だ。これについて、Dell Precision担当執行ディレクターに就任したAndy Rhodes氏は技術的、用途の2つから分析した。技術面ではIntelやNVIDIAの技術開発が奏功し、十分なレベルに達している。用途面の要因は、ワークステーションがミッションクリティカルな場面で利用されているという事情が大きいようだ。「リスクを負いたくないと思っていた」というビデオ編集者やエンジニアなどワークステーションのメインユーザーの姿勢に、このところ変化が起き始めている。
背景にあるキーワードは、セキュリティ、コラボレーション、マルチデバイスだとRhodes氏は説明する。1つ目のセキュリティは、まだ発表していない次の新製品のデザイン、未公開の映画のフレームなどが漏れてしまうリスクだ。担当者がローカルに持つよりも、安全性の高いデータセンターに格納するというアイデアが受け入れられつつあるとのことだ。

Andy Rhodes氏。7カ月前にエンタープライズからエンドユーザーコンピューティング事業部に移った
2つ目のコラボレーションと3つ目のマルチデバイスは、プロジェクトに参加する人数が増えているという傾向や、プレゼン用に別の端末を使いたいなどのニーズを指す。平均的なCAD/CAMデータは450Mバイトで、このような大容量なファイルを動かすことは手間だ。クラウドにデータを持っておけば、プレゼンルームにタワー型ワークステーションを持っていかずとも、ノートPCからアクセスするような利用方法が可能になる。
実際、Dellがタワー型ワークステーションにハンドルを付けた理由として「デスクトップで作業しているスタッフが、上司に見せるために機器を会議室に移動することがあると顧客から聞いたため」とRhodes氏は明かす。
「モバイルが浸透しつつある組織において、実にアンティーク(古風)な方法だ。(ワークステーションユーザーも)さまざまなデバイスからアクセスできるべきだ」(Rhodes氏)。
Rhodes氏はこのような背景を説明した後、「顧客と話をすると、90~95%の確率で仮想化の話題になる」と述べる。需要の高まりを踏んでの仮想化戦略と言えそうだ。
セキュリティ、コラボレーション、マルチデバイスはそのまま仮想化を導入した際のメリットになるが、仮想化はこのほかにリソースの効率利用というメリットももたらす。オンプレミスのITシステムの常として、顧客はピーク時のワークフローに合わせてワークステーションを購入している。また「Premier Pro」と「After Effects」など複数のアプリケーションを作業に利用することも多く、生産性を低下させていることもあるという。
データセンターの余剰パワーを活用することでローカル側のリソースを解放できれば、高速化が図れ、作業効率が上がる。