これは歴史を振り返ってみても分かる。
1985年の通信の自由化に伴い、DDI(第二電電。現在のKDDI)、JT(日本テレコム。現在のソフトバンクテレコム)、TWJ(日本高速通信。現在のKDDI)という3社が長距離事業者として産声を上げた。JTは鉄道(国鉄)の線路沿いに敷設された光ファイバをバックボーンとして利用した。また、TWJは高速道路(道路公団)の路線沿いに敷設された光ファイバ網を利用したのである。
これに対し、京セラを中心に立ち上げられたDDIはバックボーンとして利用できる光ファイバ網を持ち合わせていなかったため、マイクロ波を用いた無線のバックボーン網を構築したのである。
マイクロ波は、光ファイバと比べ敷設の設備投資やリードタイムが少なくて済む一方、雨や霧といった自然条件に弱かったり、伝送速度や容量の拡張性に乏しいといった弱点を内包する。
DDIは、JTやTWJに対して営業力で勝っていたが、ネットワーク部分に課題を抱えていたため、その後、正反対ともいえる企業文化をもつKDDと合併することになったのである(もちろん、これだけが合併の理由ではないが)。
バックボーンとラストワンマイルという違いはあるにせよ、新興国における電話網の整備についても同じようなことが言える。
ラストワンマイルのための光ファイバやメタル線を整備するのが大変なため、多くの国や地域においてモバイルネットワークでラストワンマイルが整備されている。これも、リードタイムと設備投資の縮小を狙ってのことである。速やかなインフラ整備ということであればそれでいいが、将来的にはやはり有線ネットワークの整備が求められる日が来る。
繰り返しになるが、キャリアが競争優位性のあるサービスを提供するためには、固定網の優劣が非常に重要なのである。
大きく改善したソチ五輪の中継品質
さて、話は変わるが、ソチ五輪が終了した。多くの方々がテレビ中継をご覧になったことと思う。
ソチのような遠隔地であっても、もはや中継回線の遅延で話しにくかったり、場合によってはエコーが聞こえてきたりということは皆無になった。既に記憶から消えている感もあるが、ほんの数年前までは衛星回線で中継されていることが多く、その遅延は相当気になったものである。これは静止軌道が高度約3万6000kmであり、電波が往復するために0.25秒かかることから避けられないものなのであった。
現在は、地球上の多くの地域に光ファイバ網が整備されたため、このような遅延の大きい経路を使うことが少なくなったのである。有線ネットワークと無線ネットワークの歴史について簡単に振り返ってみると、初めて大西洋間で電信が行われたのは海底ケーブルだ。その後、衛星通信が一般的になり、さらに時がたって光ファイバによる海底ケーブルが整備された。
現在は、モバイル通信に注目が集まっており、このため無線のネットワークが重要視されている。特にLTEのサービス開始により、光ファイバをも上回るような無線通信サービスが提供されているかのような印象を与えられている。
しかしながら、歴史が教えてくれているとおり、また必ず有線ネットワークが重要視される時代がやってくる。