モバイルファーストという不可逆

モバイルファーストに対応する組織デザイン--家電量販店の事例から(後編)

千葉友範(デロイト トーマツ コンサルティング)

2014-03-12 07:30

 前編で部署間の情報共有が統制されていないために、現場が混乱していた家電量販店の例を紹介した。今回は解決編だ。

情報を配信する

 プロジェクトではこの分断されたサイクルをいかにつなぐかを考えることにした。ソーシャルリスニングの結果とコールログの分析結果をつなげて分析し、顧客属性などの変数に基づいて、類似しているいくつかのかたまり(クラスター)に分類。分析した情報から優先順位や回答方法をパターン化し、それをウェブ上のFAQサイトへタイムリーに情報公開する。また、応対マニュアルと併せて、店舗と販売員が使うタブレットに毎朝配信することにした。


日次分析プロセス

 販売員は毎朝、タブレットの電源を入れると最初にこの情報を目にすることになり、ウェブサイトやコールセンターでどのような問い合わせが増えているのか、またはその回答方法についてトピックを簡単に確認することができるようになった。

 これまで、店頭に配備された接客用のタブレットでは、製品比較や料金シミュレーション機能が使えたが、顧客ID(ポイントカード情報)を使って、ポイント割引を考慮した料金シミュレーションや購入履歴や保守履歴、コールセンターへの問い合わせ情報などを紐付けて閲覧することができなかった。

 配信される情報と顧客のログを紐付けて販売員が持つタブレットに表示することで、これまで以上に顧客の状態を理解した上で販売員は効果的に接客に当たることができるようになった。

 こうした情報をいつでも把握できることによって、重クレーム化する顧客を近くの商談スペースに誘導し、座ってもらい、コーヒーを1杯出して話をするだけでも重クレーム化を回避できたという実績がある。

 同社ではこうした取組みを実施する前後で比較すると重クレーム化する入電量の約20%(応対時間に換算して30%程度)削減できたとしている。

タブレットは情報の入り口と出口

 今回紹介した取り組みは、継続的な仕組みとしていかに定着させるかが課題となった。これまではソーシャルリスニングは広報部門、入電分析はコールセンター部門、タブレットの利用タップ数は営業部門とまったく別の部門が管轄していた。

 今回の分析結果に基づき、同社ではデータサイエンティスト部門(仮称)を新設し、図ような情報の循環サイクルを仕組み化した。


情報の循環サイクル

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