富士通研、クラウドでの分散サービス基盤技術--システムを自動的に再配備

山田竜司 (編集部)

2014-03-14 17:54

 富士通研究所は3月14日、クラウド上の処理やデータの一部を広域ネットワーク上のサーバに分散して配備し、サービス要件の変化に応じてシステムの構築や運用を自動化する分散サービス基盤技術を開発したと発表した。

 この技術では、接続可能なデバイス数などのサービス要件の変化に応じ、最適な処理の配備先を決定し、自動配備する。

 これにより分散システムの再配備の構築期間を数日から数分に短縮できるという。サービス提供事業者は分散システム構築と運用のライフサイクルを高速化させ、最適な分散処理により、全体の通信トラフィックを約100分の1に削減することも可能としている。

 また、人手では不可能だった数十万台規模のデバイスとサーバを含むシステムの運用にが可能なため、小規模で始めたクラウドサービスを、アプリケーションの改修などの手間を必要とせずに規模の拡大に応じたシステムに自動拡張できるという。

 具体的に富士通が開発したのは「配備先計算の高速化技術」と「管理トラフィックの削減技術」の2つ。

 トラフィックの配備先計算の高速化技術により、配備する処理の特性に応じ、ネットワークの最短経路上のサーバを優先するか、機器とネットワーク上の近さを優先するかを組み合わせて探索するアルゴリズムを開発し、計算時間を従来の約500分の1に短縮したという。

 インフラの変化に素早く追随して再配備するには、システムを監視するサーバ(監視サーバ)にインフラの状態を示す管理情報を頻繁に送信する必要があり、特に大規模なシステムでは管理トラフィックの増加が問題になってくる。

 今回開発した管理トラフィックの削減技術は、配備先計算で最適候補だけでなく次候補まで計算し、さらにその次の候補が最適解となるトラフィック変化条件を計算して、計算結果と処理をゲートウェイサーバに配備することで、再配備に必要な変化だけを監視サーバに送信する技術を開発した。

 再配備に影響しない軽微な変化は監視サーバに送信されなくなるため、管理トラフィックを従来の定期的に送信する方式に比べて約700分の1に削減できると説明する。

 今後はクラウドシステムのマルチテナント化や、SDNなどの技術と連携させ、2014年度中の実用化を目指す。

 富士通研究所は開発の背景として、機器同士が情報伝達するM2M技術の進展やモバイル端末の普及により、クラウドサービスとデバイス間のデータ量は急激に増加しているが、サービスの応答性能を保つためにクラウドシステムや通信網の設備増強などの課題があると説明した。

 このため、限られたネットワーク帯域の中でリアルタイムなサービスを提供するためには、データ発生源の周辺や広域ネットワーク上の中間サーバに処理を分散する必要があると指摘している。


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