資産ではなく資源としてのビッグデータ
ビッグデータ活用による売り上げや収益向上について、ネット広告関連領域での取り組みの方向性を基に考察してきたが、データを自社の「資産」としてとらえるのではなく、ビジネス社会・ビジネス環境の「資源」としてとらえ直し、その資源とどのような関係性を持って、自社のビジネスに生かすのか、売り上げや収益の向上に生かすのかを考えねばならない。
データは企業にとっての資産であることに間違いはないが、それを頑なに囲い込んで運用する時代は去りつつあり、セキュアな環境で資源を融通し合って新たな仕組みを作り、それぞれが有効に利用する時代になりつつある。
天然資源に例えて考えてみると、資源そのものを売るという形もあれば、資源の組み合わせや加工によってできた生産物を売るという形もある。水資源のように地域によって評価価値が異なる場合もあれば、鉱物資源のように個々の希少性によって評価価値が異なる場合もある。
見向きもされなかった資源に新たな価値を見出し、ビジネスの源泉にする者もいる。しかし、最も重要なことは、資源を有する者が必ずしも強者ではなく、資源を戦略的に有効に利用する者が勝者となっていることである。
ビッグデータは、現代の人類社会が新たな形で日々生み出している資源そのものである。ビッグデータ活用による売り上げや収益の向上は、それを改めて認識し、見つめ直すところから始まるのではなかろうか。
これまで6回にわたり、経営戦略的な観点からビッグデータのとらえ方や生かし方を考察してきたが、この連載中においても目まぐるしく状況が変化してきている。次回は、そうした動向も踏まえつつ、ビッグデータと経営についてまとめる。
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- 辻 大志(つじ たいし)
- バーチャレクス・コンサルティング株式会社 経営戦略室室長
- 2012年6月より現職。事業展開・拡大に向けた施策やビジネスモデル構想、CRMやデジタルマーケティング等の領域を得意とする。以前はアクセンチュアで事業構想策定、CRM戦略策定、ビジネスプロセス改善、システム導入、アウトソーシング活用等といったプロジェクトに従事。その他、アジアでの新規事業構想策定、事業立ち上げ支援及び事業提携に係る調整等を推進した。バーチャレクス・コンサルティングの製品情報はこちら。