企業にビジネスモデルの変革を迫る新たな「デジタル化」の波が押し寄せている今、それを誰がリードすべきなのか。Gartnerの調査結果を基に考えてみたい。
ガートナージャパンが先ごろ、米Gartnerが2013年10~12月に世界77カ国2339人の最高情報責任者(CIO)を対象に、優先課題などを調査した「2014年CIOアジェンダ」の結果を発表した。
それによると、CIOの51%がデジタル化の波の速さに対応できないと不安を感じ、42%がデジタル化に対応するために必要な人材が足りていないと感じていることが分かった。ちなみに、全回答者の4%にあたる日本企業のCIOだけを見れば、それぞれ43%および57%という割合で、グローバルとの差にデジタル化への危機感が少なく準備も遅れている日本企業の実態が浮かび上がった。
CIOが頭を悩ませる企業のデジタル化
ここで言うデジタル化とは、ソーシャルやモバイル、クラウドなどの新たなテクノロジーが、企業のビジネスモデルを変革することを指す。Gartnerでは個人の力量頼みだった「職人的なIT」から、システムの最適化を図る「ITの工業化」を経て、あらゆるものが「デジタル化」する「第3の時代」を迎えつつあるとしている。
発表会見で説明に立ったガートナージャパンの長谷島眞時エグゼクティブプログラム部門グループバイスプレジデントは、デジタル化に対するCIOの調査結果に対し、「CIOにとってデジタル化への対応が大きな課題となっていることが明らかになったが、CIOは今後デジタル化という名の“ドラゴン”を飼いならしていくべきだ」と指摘した。
CEOがとるべきデジタルリーダーシップ
実は、長谷島氏の「デジタル化という名のドラゴンを飼いならせ」というメッセージは、今回の2014年CIOアジェンダの副題だ。そこには、今回のレポートの取りまとめ役を担ったGartnerのDave Aron(デーブ・アロン)バイスプレジデント兼フェローがこうコメントしている。
「CIOとそれぞれの企業がドラゴンを飼いならせれば、企業は大きな新しい価値を創出でき、それを基盤としてCIOとIT部門も新たな役割を担って信頼を高めることができる。しかし、ドラゴンを飼いならすことができなければ、ビジネスは失敗し、IT部門の存在意義も失われてしまうだろう」
ただ、Gartnerでは企業のデジタル化への対応として、最高デジタル責任者(CDO:Chief Digital Officer)を設置する選択肢も提示している。その役割は、CEOの領域であるビジネス戦略、CIOが担うIT、最高マーケティング責任者(CMO:Chief Marketing Officer)が担うマーケティングを組み合わせたイメージだ。
とはいえ、長谷島氏は「CDOの設置も過渡的な措置になる可能性が高い。なぜならば、あらゆるものがデジタル化していけば、それが当たり前になるからだ。そうなると、例えばCIOがCDOの役割を担うとしても、全体のビジネス戦略に責任を持つCEOがデジタルに精通することが求められる」との見解を示した。
デジタルに精通するためには、それなりに技術的な勘所を押さえる必要はあるが、CEOに求められるのはそれによってビジネスがどう変わるか、さらにはどう変えていけるか、といったビジネスマターの発想である。そう考えると、企業のデジタル戦略をリードするのは、ほかでもないCEOであるべきだろう。
CEOが「うちの会社のデジタル化はどうなっているんだ」とCIOに聞いているようでは、もはやサバイバル競争に生き残れないことを肝に銘じる必要がある。
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