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人間のリバースエンジニアリングとしてのDNA解析

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2014-03-25 08:00

 先日NHKの動物番組で擬態動物を特集を見ていたら、どうやっても花にしか見えないカマキリ、風に揺れる枯れ枝にしか見えないナナフシ、腐り具合まで枯れ葉でしかあり得ないガなど気持ち悪さと好奇心の入り混じる映像が延々と続くのであった。これを見ていて不思議に思うのは、どれだけの時間を経れば交配と突然変異の連続が、ここまで奇異な結果を生み出すのかということだ。

 そのDNAを解析できれば、その昆虫のルーツ、どの遺伝子がその特異な形態を生み出しているのか探ることができるだろう。言うなれば、遺伝子解析とは、昆虫というオブジェクトをリバースエンジニアリングして、その仕組みを解明することに他ならない。

 そして、今知っておくべきは、それはわれわれ自身にも身近な話になりつつあるということだ。つまり、誰にでも人間のリバースエンジニアリングが可能になろうとしているのだ。

 米国のIlluminaは1000ドルでヒトの全DNAを解析するサービスを提供しているという。Googleが出資する23andMeは、99ドルで自らの祖先を調べるサービスを提供している(同社は当初健康関連のサービスを提供していたが、米当局との調整が難航し、現在は停止している)。また、多くの研究や国家プロジェクトによりヒトDNAのサンプル数も増え続けている。

 そして究極は、ヤフーは4月から遺伝子解析に基づく「生活習慣の改善を助言するサービス」を始めることだろう(日本経済新聞3月22日付け)。これまで医療現場や一部とんがった米国のベンチャーの取り組みと思われていた個人向けの遺伝子解析サービスだが、ヤフーが提供するという事実が醸し出す身近感は半端ない。今後、ヒト遺伝子の蓄積が急速に進み、さまざまな活用の可能性が見えてくるに違いない。

 一方、NewsWeek誌(3月12日号)は「Hacking your DNA」という記事で、次なる“Snowden氏”が告発するのは政府によるヒトゲノムの不法利用に関してだろうと警告する。つまり、政府が国家の安全対策の目的で、ヒトの遺伝子を不法に取得、分析する可能性を示唆している。

 もしも、遺伝子特性からテロリストやスパイである可能性のある人物が特定できるのであれば、容疑者の絞り込みに活用されるかもしれない。あるいは、もしも遺伝子がわれわれの行動特性と紐付けられれば、ヒトゲノムマーケティングの実現も可能となるだろう。つまり、遺伝子特性と嗜好性の相関が見出せれば、遺伝子の特性に合わせたマーケティング施策が打てることになる。

 昆虫の遺伝子を覗き見ることは知的好奇心に過ぎないが、自分の遺伝子を覗き見ることはそれ以上の意味を持つと認識しておくべきだろう。遺伝子解析とは、人間のリバースエンジニアリングなのだけれども、そのコードは自分で書いたものではないのである。

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飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

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