Software-Defined Networking(SDN)は言ってしまえば、ネットワークをより柔軟にしようということが狙いだ。個人や企業にネットワークをベースにしたITサービスを提供するサービスプロバイダーにとって、SDNの考えを取り入れたネットワークを構築することは必要になっている。
ジュニパーネットワークスは3月20日、サービスプロバイダー向けにSDN対応能力を拡充する技術群「Junos Fusionテクノロジ」「SDN WANコントローラ」「MXサービスコントロールゲートウェイ」を発表した。今回の拡充でサービスプロバイダーは、カスタマイズ性にすぐれたネットワークを構築し、迅速にサービスを提供できるようになるとしている。
ジュニパーネットワークス サービスプロバイダービジネス統括本部 営業開発本部 チーフアーキテクト 長滝信彦氏
サービスプロバイダービジネス統括本部 営業開発本部チーフアーキテクトの長滝信彦氏は「ネットワークをカスタマイズする必要性が高まっているが、現状のままでは難しい。課題になっているのは、運用の自動化、インフラの拡張性、サービス創造の柔軟性の3つ。今回の拡充策は、この3つに対応したものだ」と説明した。
拡充策の1つめのJunos Fusionテクノロジは、ネットワーク運用を自動化する技術。これまでのように、ネットワーク管理システムから個々のデバイスを管理するのではなく、デバイス1000個を1つの単位としてまとめ、ルータ「Juniper MX/PTX」シリーズから一括して管理することで、ネットワークの複雑性と運用コストを低減できるという。
管理にはネットワーク管理プロトコル「NETCONF(Network Configuration Protocol)」やデーモデリング言語「YANG」などの標準を利用する。サードパーティの製品と互換性を持ち、SDN管理として拡張できる。2014年第2四半期(4~6月)に提供される予定。
2つめのSDN WANコントローラは、WANについて最適な経路の特定、トポロジ分析、トラフィックエンジニアリングなどを行うコントローラ「NorthStar Controller」のこと。2013年12月に買収したWANDLの技術を統合し、インテリジェントな分析とモデリングをできるようにした。
WANに関するSDNの提供により、SDNコントローラ「Contrail」を補完し、システム全体の効率性を図ることができるようになるという。NorthStar Controllerは、2014年後半に提供する予定。PTXシリーズの新製品として1Tバイトに対応したラインカード「PTX 1Tbラインカード」も発表した。
3つめのMXサービスコントロールゲートウェイは、ルータのMXシリーズを“サービスコントロールゲートウェイ(SCG)”として利用できるようにする機能拡張。SCGとして利用することで、誰がネットワークを使用するのかという点だけでなく、彼らが何のためにネットワークを使用するのかという点に基づいて、カスタマイズしたサービス体験を提供できるという。
具体的には、MXシリーズで提供する「Junos Subscriber Aware」「Junos Application Aware」「Junos Policy Control」「Junos Video Focus」といったユーザーやユーザーの属性、利用アプリケーションなどを識別する機能を利用して、ユーザーに応じたサービスを最適な環境下で提供できるようにする。SCG機能は2014年中盤に提供されるという。
サービスプロバイダーが、NFV(Network Functions Virtualization)などを柔軟に構築し、新サービスを提供できるようにするためのサーバ「CSE2000 Carrier Services Engine」も発表した。Contrailと併用することで、ファイアウォールの「Firefly Perimeter」や「DDoS Secure」などの新規サービスをNFVとして迅速に提供できるという。
長滝氏は、こうしたラインアップの拡充で実現されるサービスプロバイダーのネットワークとして、IPとITを融合させたクラウドサービスの例を紹介した。ここでは、サービスプロバイダーは、GoogleやAmazonのクラウドサービスの仲介や再販、仮想専用網(VPN)の生成、NFVのサービスチェイニング、最適なパス管理といったサービスを適切なSLAのもとエンドトゥエンドで提供するようになるという。
「“High IQ Network”というコンセプトで、インテリジェントなネットワークアーキテクチャを構築を支援している。運用の自動化、拡張性の高いインフラ、柔軟なサービスの創造はこれに欠かせないものだ」(長滝氏)