大元隆志のワークシフト論

営業担当をつける余裕はない--クラウド事業者のさえたやり方(前編) - (page 2)

大元隆志(ITビジネスアナリスト)

2014-04-15 07:30

--サービス開始からわずか1年で約4倍の規模に成長したんですね。競争が厳しい分野なのにすごい。勉強会を開催しようとしたきっかけは何だったのでしょうか。

 クラウドの世界ではAmazonが国内でも早くからユーザー会を起ち上げて積極的にコミュニティを運営をしていました。私も参加してたのですが、コミュニティがクラウドの販売に重要な役割を果たしていると感じたんですね。ユーザー事例の共有や、エバンジェリストの話を聞いてAmazonのサービスに好意的な感情を持つなど、従来の広告ではない効果を感じました。そこで、弊社でも始めようと思ったのがきっかけです。まずは予算もあまりかけずにできる勉強会からやろうかと。

--勉強会はどの程度の頻度で開催されているのでしょうか。

 2012年からCloudnの勉強会を開始して、これまでの開催回数は14回。約700人に参加いただきました。

--勉強会のための集客に広告など出しているのでしょうか。

 勉強会に広告は利用していません。1回目開催時の集客は、社外コミュニティとのつながりでできた方にご案内したり、ブログやTwitterアカウントでの告知、書籍の読者の方に参加して頂きました。 

--なるほど、社外活動があったからこそ、広告も出さずに集客できたんですね。

 はい、立ち上げ時には効果的でしたね。それ以降は前回参加者やCloudnを申し込んだ顧客などへも参加を案内しています。

--講師はどのようにして見つけるのでしょうか。

 基本的には社内の人間が持ち回りで担当しています。時折パートナー企業に講師をお願いすることがありますね。

--勉強会のKPIや、効果についてはどのように考えていますか。

 KPIは設定していませんが、月に1回開催という目標はあります。ですから具体的な効果という点では測定しづらいですが、勉強会の参加者がパートナーになってもらえることもあります。

 ただ、単純に販促だけのために継続しているというわけではありません。顧客にとっても直接開発者と意見交換をできる場ですから、顧客満足度の向上という点でも価値があると考えています。また、開発者にとっても顧客の声を直接聞ける場ですからサービス開発へのフィードバックにも役立てることができます。こういった効果を数値化することは難しいですが、マーケティング戦略上は大切な取り組みだと考えています。

--Cloudnではオフィシャルなイベントを開催する時もあると思いますが、勉強会との差別化はどのようにしていますか。

 イベント開催の目的はリード獲得が主目的です。勉強会の主目的は技術習得の場を提供することです。クラウドは継続利用していただくことが大切です。そのためには顧客にCloudnの便利な利用方法を知ってもらうことで、より長くご利用いただけると考えています。また、顧客ではないエンジニアの方であっても、Cloudnについて理解してもらうことで、エコシステムが拡がっていくと考えています。

--イベントでリードを獲得して、勉強会は解約防止、エコシステムの拡大の狙いがあると。一種のアフターサービスみたいですね。勉強会について他に工夫されていることはありますか。

 社外の方にも会場を提供しています。社外の方が主催される勉強会の中で10分ほどプレゼン枠をいただき社の取り組みをPRしています。この場合は、弊社は会場を提供するだけなので、費用対効果は高いと考えています。 

--勉強会以外での工夫は。

 技術ブログを社外に公開しています。クラウドと言っても顧客によっては利用方法はさまざまですから、APIの活用方法や、利用事例を公開しています。より多くの情報を公開している方が検索エンジンでも検索されやすくなりますから。また、公開されている情報が多い方が他社との比較で悩まれている方には、安心いただけると考えています。

--確かに、海外製のクラウドサービスですと英語ばかりでハードルが高いと感じる人も少なくないでしょうね。

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