「気質」は気候を反映する
日本の南北間でも気質が違っているように、ベトナム人でも南北間で気質は大きく変わってきます。よく耳にすることの1つとしては、
- 北部の人は買いたいものがあればコツコツとお金を貯めて買い物をする
- 南部の人は欲しいものがあればぱっと使ってしまう
というものがあります。上記の通り、寒い季節が待っている北部では、冬に備えるという発想があるためなのでしょうか。また、「放っておいても年に3回も4回もお米は取れる。庭に果樹を植えておけば勝手に果実が実る」という温暖な南部では、北部とはまた違った生活習慣があるのかもしれません。
また、中部ベトナムでも北に位置するゲアン省は、土地がそれほど肥えておらず、台風なども多いことから、この地域出身者は忍耐強いと言われています。しかし、他の地域出身者について、忍耐強いというキーワードを聞くことは一般的ではありません。このようにベトナム人といっても出身地域によってさまざまです。
ところで、日系企業がベトナムに進出する際には、各種のフィージビリティスタディ(実行可能性調査)を行うことも多いでしょう。実際これまでにも、「ホーチミン市では購買意欲が旺盛」といった調査レポートも多く出ています。
これらの活動は、当然、経済活動からの視点が主になっていますが、都市人口率が30%程度とされているベトナムにおいては、まだまだ上記のような個人を取り巻く文化的、自然的な環境が、個人の行動へもたらす影響が日本以上に強いようにも思います。
「旧正月明けに工場に戻ってこない労働者が多い」という悩みを伺う機会が南部ベトナムでは特に多いですが、「食えないからホーチミン市に出てきた」というよりも、「田舎に帰っても十分食えるから気楽に働きたい」という背景がある限り、工場勤務に対する日本人とベトナム人の根本的な考え方の違いが出るのかもしれません。その意味で、文化人類学的な視点も求められるのでしょう。