環境面としては、モバイルなどを採用して隙間時間を活用し、社外での簡単な業務(メールやスケジュール確認)を一部または全社的に認める企業が83%、現場でのタブレットの活用(顧客へのプレゼンテーションや現場での在庫管理等)を61%の企業が許容しています。
一方、人事労務の側面では在宅勤務を61%の企業が全く認めていないため、ノート PC やタブレットを活用した働き方は、効果がないというのが実態ではないでしょうか。
簡易的、本格的スマートワーク
千葉:まだまだワークスタイルを変革できたというにはほど遠い状況ということでしょうか。
田中:決してポジティブな状況とは言い難いです。ワークスタイル変革というのは、先ほどお話した歪みをいかに解消していくかということが重要です。マネジメントの見直しがとても重要です。
エンタープライズモバイルもそうですがITが高度化し、個人でも自由に選択できるようになると、そのモバイル環境はオフィスと遜色(そんしょく)のないものになっていくわけです。極端なことをいうとオフィスに出社する必要すらなくなるかもしれません。しかしその場合、従業員側も管理職側も困ることがあります。
千葉:オフィスに出社しないでよくなれば、仕事をしやすくなるイメージがあります。
田中:メリットは沢山ありますが、業務、労務管理上は、課題は山積みです。従業員側も管理者側も不安になる典型的な例は、「自分は正しく評価されているのか」「自分の部下はちゃんと仕事できているのか」という問題です。
目の前で業務していないと、作業指示や進捗確認を適切になせず生産性が下がってしまい、適切なマネジメントが困難になるという意見が多いというのも、ワークスタイル変革を困難にしている一因です。
このようなITと人事労務の不一致をきちんとケアしていかないと、なかなかワークスタイル変革は難しいでしょう。
後編に続く。
- 千葉 友範
- デロイト トーマツ コンサルティング マネージャー 大学院在籍中にIT系ベンチャー設立に参画を経て現在に至る。業務改革プロジェクトを中心に実施し、近年では、デジタルデバイスを活用したワークスタイルチェンジや販売力強化など、戦略策定から実行支援までプロジェクトを多数実施。「会社で使う タブレット・スマートフォン2013」など執筆多数。