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興味や関心に応じて広告をパーソナライズ--クリテオの戦略を聞く - (page 3)

大川淳 山田竜司 (編集部)

2014-04-10 16:23

知恵を持ち寄って競い合いで知見を共有

 同社は、46の国と地域に広告を配信しており、本社はパリにある。パリやロンドンなど欧州、ニューヨークやボストン、シカゴなど米国、東京やソウル、北京、シンガポールなどアジア太平洋、合計で16カ所の拠点があり、800人以上が勤務している。「グローバルカンパニーだからこそ、知識の共有が一段と重要になる」と鈴木氏は語る。


  鈴木氏は「推奨する商品情報を示す場合の“ボタン”をどうするか、背景色の選定など、どんなクライアントにどんな表現形式がふさわしいのかなどの情報は、社内で十分に共有している必要がある。1つの拠点である手法を開発すると、それを各国で共有することで、さらに効率的に動くことができる。拠点間でのコミュニケーションの重要性が一層高くなっている」と話す。

 「例えば、日本ではモバイルでの広告展開にはビジネスチャンスが大いにあるということについて、実際の数字を示し、ほぼ毎日ビデオカンファレンスでやり取りするなど、本社とコミュニケーションを取って合意形成し、モバイル分野への重点化につなげている」(鈴木氏)というのが、同社の流儀だ。

 社内のさまざまな意見、着想を持ち寄り、全社的に活かしていく仕組みとして、ユニークなのは、コンテストの場となる「クエスト」というサイトだ。鈴木氏は「当社が独自に開発した。例えば、モバイル向けビジネス促進のため、世界中でモバイルのクライアントを10社集めようといったテーマで、みんなが競い合う。ここでは実績に応じ、ポイントが発行される。ポイントは貯めることができ、これを用いてコンテストを主催することもできる。ポイントは現金に変換することもでき、競い合うモチベーションになる」と説明する。

モバイルに重点

 米国でも、広告ビジネスはモバイルにシフトしている。「PC経由のトラフィックは今後良くて横ばい、おそらくは微減という傾向になるだろう。スマートフォンを基盤としたモバイルによる購買が実際伸びている。全体からみれば未だ中心とまではいかないものの、成長の軸にはなる」と、鈴木氏は見ている。

 今後、同社の事業は企業間取引(BtoB)にも歩を進めていくのか。鈴木氏は「当社のリターゲティング・レコメンデーション広告に対するユニークビジター数は6550万だが、ビジネス向けはまだ小さい。こちらの領域での成長は、もう少し先になるとみている。オンラインからオフラインというように、垣根をまたいで行ったり来たりするような仕組みは確立していない。同一人物がPCとスマートフォンを使い分けている場合、1人の行動であるにもかかわらず、システム上は別々の人に見えてしまう。これは大きな課題だ。

 鈴木氏は「当社は欧州での売り上げが、全体の5割を占めている。日本を含むアジア太平洋地域は2割だ。特に拠点設立後3年にしては、日本法人の貢献度は高い。われわれのような企業の場合、米国の比率が5割程度という場合が多いのではないかと思われるが、米国は2割であり他の企業とは一線を画している」と語る。同社では、世界市場を米国、欧州、アジア太平洋、新興国の4つに分けて事業展開しているが「新興国のうち、特にブラジルやロシアなどが伸びてきている。ブラジルなどは人口も多く、物を買おうという意欲も高く、広告市場は規模が大きい。何しろ、われわれと同様の企業は日本にはほとんどないが、ブラジルにはあるほどだ」(鈴木氏)という。

 今後の優先課題は、やはりモバイルだ。鈴木氏は「モバイル向けが大きな成長機会であり、ここに重点投資していきたい。2013年7月に買収した英AD-XTrackingのサービスを活用する。モバイル向けアプリ内に広告を配信するシステムが整い、ベータ版が完成している。本格的な開始は、もう少し先になるが、PCで可能なことはモバイル向けでも効率的に提示できるようにする。スマートフォンで商品を探し、選んでも、購入はPCでするという例は多いので、同一人物の行動がPCとスマートフォンに分かれるとシステム上、別人と認識されてしまう点はできるだけ早く改善したい」と述べ、広告を生かした電子商取引の利便性を一層向上させることを図る。

 PCからモバイルへの流れが明確になろうとする中で「日本では依然、電子商取引は全体からみれば数%程度にとどまっている。しかし、今後5年で確実に10%は超えることになるだろう。となると、オンラインとオフラインをまたいだ一貫性のあるマーケティングが求められることになる」と鈴木氏は指摘、次の潮流に備える。

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