キヤノン、3Dプリンタのラインアップを拡充--試作パーツでリアルとCGの融合も

坂本純子 (編集部) 2014年04月10日 13時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は4月10日、米国3D SYSTEMS製3Dプリンタのラインアップを強化すると発表した。これに合わせ、3DプリンタとMR(Mixed Reality:複合現実感)システム、3D CADソフトを組み合わせた3Dソリューション事業を開始した。

カラーに対応、大型パーツの作成に向いている「ProJet 660Pro」
カラーに対応、大型パーツの作成に向いている「ProJet 660Pro」

 キヤノンMJでは、2013年11月から3D SYSTEMSのプロダクション3Dプリンタ(税別で3千万円~1億2千万円)の販売を開始している。今回は、取り扱い製品のラインアップを拡充し、パーソナル分野として教育やデザイン向けに「Cube X」や「ProJet 1000/1500」、建築やデザインなどプロフェッショナル向けに「ProJet x60シリーズ」「ProJet 5500x」など税別で50万円から3000万円程度までの製品を取りそろえた。

高精細なプラスチックパーツを作成できる「ProJet 3500 HDMAX」
高精細なプラスチックパーツを作成できる「ProJet 3500 HDMAX」

 マニュアルは、日本語版と英語版を用意。メンテナンスは、3D SYSTEMSのライセンスを持った専門のカスタマーエンジニアが担当する。東京では5名からスタートし、6月末までに導入顧客がいる地域を中心に全国展開していく方針だ。

ProJet 660Proで作成された作品
ProJet 660Proで作成された作品

 主に、製造業での導入を見込む。モノづくりの現場での大きな課題の一つは金型だ。コストが高く、納期に時間がかかるといった問題がある。自動車業界では、3Dプリンタを取り入れることで金型コストを10分の1に抑えられたり、納期が1週間から2週間だったものを1日にできたりした例もあるという。

 他社に依頼せず自社で手がけられるようになれば、情報の流出を防げるメリットもある。導入にあたっては、経済産業省らが中小企業向けや大学・高専向けに支援する「ものづくり補助金」などが追い風になると見込んでいる。

 なお、3Dプリンタのプロフェッショナルモデル「ProJet 3500 HDMAX」と「ProJet 660Pro」を東京・品川のキヤノンショールームに展示し、デモンストレーションや実機評価の機会を提供するとしている。

  • ProJet 3500 HDMAXで作られたパーツ。羽の細かさに注目

  • ドライブシャフトも駆動する高精細な仕上がり。ProJet 3500 HDMAXで作成

  • カラーで作成できるProJet 660Pro

「3Dソリューション」で開発期間の短縮やコスト削減を

 キヤノンMJグループは、キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)を中心に、CADやCAM、CAE、PDMなどの3D関連ソフトや、2012年にはMRシステム「MREAL(エムリアル)」を製造業向けに販売している。

MRシステム「MREAL」で使用するビデオシースルー方式のヘッドマウントディスプレイ
MRシステム「MREAL」で使用するビデオシースルー方式のヘッドマウントディスプレイ

 MRは、現実世界とCGをリアルタイムに違和感なく融合させる映像情報処理技術だ。ヘッドマウントディスプレイを着用すると、コンピュータ内のCGと現実世界の映像を高精度に融合した立体的な映像が見られる。歩いたり、立ったり座ったりして位置を変えても、位置情報や姿勢センサにより、リアルタイムに正確な情報を表示できる。このシステムはすでに、“デジタルモックアップ”として自動車業界などでも導入されており、設計した製品の操作性やデザインの評価などが行われているという。

位置情報などを感知するセンサを部屋に設置しておく
位置情報などを感知するセンサを部屋に設置しておく

 今回、新たに手がける3Dソリューションは、3Dプリンタで出力した試作パーツを組み合わせるなどし、よりリアルな3Dコンテンツを活用した設計や開発、生産プロセスまで一貫して構築することを目指すもの。

3Dプリンタで出力されたバイクのハンドル
3Dプリンタで出力されたバイクのハンドル

 例えば、バイクの開発中にハンドルを握れるようにすることで、リアルな感触が生まれ、ユーザーの姿勢の変化やミラーとの距離、視線などを具体的に体感できるようになる。これにより試作回数を削減でき、開発期間の短縮に加えてコストや環境負荷の低減に貢献できるとしている。

ヘッドマウントディスプレイから見える景色を外部ディスプレイに出力したところ。このデモでは、ハンドル部分が3Dプリンタで出力したパーツを使用しているため、モニタとの距離などをリアルに感じられる
ヘッドマウントディスプレイから見える景色を外部ディスプレイに出力したところ。このデモでは、ハンドル部分が3Dプリンタで出力したパーツを使用しているため、モニタとの距離などをリアルに感じられる

 3Dソリューションの価格は、3Dプリンタおよび3D関連ソフト、MRシステムの機種や装置構成、システム構成により異なるが、数千万円程度からを見込む。

 キヤノンMJグループは、2014年から開始した3カ年計画「中期経営計画」の重点戦略として、“Beyond JAPAN”の推進を掲げる。グループの総力を結集し、これまでの枠組みを超えてスピード感のある経営を目指すもので、中でもビジネスソリューションセグメントの成長戦略においては、2016年に売上3750億円、営業利益123億円を目標としている。3Dソリューションなどの独自事業領域では、2016年に売上げ100億円以上、年平均110%の成長率を目指す。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell EMC World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]