ポリコムジャパンは4月9日、2014年度の事業戦略を明らかにした。同社は映像会議システムの専業メーカーで、日本法人も1998年から事業をスタートしている。2013年度の日本法人は「前年比2桁成長となる過去最高の売り上げを達成することができた。特に金融、医療、教育で大きな伸びとなった」と代表執行役社長であるLorne Fetzek氏は説明する。2014年度も「2013年度の成長レベルを維持したい」(Fetzek氏)と強い意欲を見せる。
ポリコムジャパン 代表執行役社長 Lorne Fetzek氏
そのための具体的方策として(1)ハードウェアからソフトウェアへの事業転換、(2)国内主要都市の開拓、(3)特定業種への注力、(4)販売体制の強化――という4点を挙げる。注力業種として金融向けを紹介。事業継続計画(BCP)目的で導入した映像会議システムを、より幅広く利用してもらうために提案を強化していく。
コミュニケーションの“温度”が高い映像会議
ポリコムジャパンでは2014年度の事業戦略として4つの方策を掲げている。
(1)のハードウェアからソフトウェアへの転換は、端末やサーバといったハードウェアから、ソフトウェア提供への転換を図り、企業や団体の規模やニーズに応じた提案への転換を進める。(2)の国内市場の開拓として、これまでの首都圏での販売に加え、東京以外の主要都市にもアプローチ。関西、九州、東北といった地方都市での体験イベントの開催や、現地パートナーとの協業で地方での成長を目指す。
(3)の特定業種への提案については、製造、金融、医療、高等教育機関への販売を強化する。対象とする企業規模も大企業だけでなく、中堅企業まで領域を広げる。(4)の販売体制についても、ポリコムジャパン社内にハイタッチセールスチームを強化し、提案する際にユーザー側のニーズを聞き取る力を持ったチームとすることを目指す。
ポリコムジャパン ストラテジックアカウント営業部 部長 川上聡夫氏
注力業種の一つである金融業界は、東日本大震災以降、BCP目的に映像会議導入を積極的に進めた。導入を決定したのは、「震災後、電話に比べて回復が早かったIP通信とコミュニケーションの“温度”が高い映像会議が有効であると判断されたため」(ポリコムジャパン ストラテジストアカウント営業部 部長 川上聡夫氏)だという。
2014年度はBCP目的で導入された映像会議システムを、多方面で活用できるように提案していく。非常時を想定したBCP用途だけでなく、金融業界のニーズに即した日常的な活用方法を提案していく。
一つは顧客満足度向上を狙い、支店に来店した顧客と投資や運用相談などの専門家が映像会議で顧客に対応することで、顧客満足度を上げるとともに、専門家の知識による営業効率アップを狙っていく。営業担当者がタブレット端末を持って顧客の元に出向いて、遠隔地にいる専門家と顧客をつなぎ、専門性の高い商談を進めることにも活用する。
もう一つは、意思決定の迅速化を目的に高画質な映像会議を利用することで、離れた場所でのコミュニケーションをフェイストゥフェイスでのコミュニケーションに近い感覚で展開する。その結果、融資判断の迅速化など意思決定迅速化につながると金融業界にアピールしていく。
営業効率の向上につながる活用方法として、新製品説明や幹部による経営方針説明会に映像会議システムを活用。情報を正確に共有できる環境を作ることで、正しい情報を学び、営業成績向上につなげていくことを提案する。
こうした用途提案をする際のポリコムの強みとして、高いセキュリティ、音声品質の高さ、帯域が低い場合でも高精細な画質を提供する技術力などを挙げている。「安定した運用を求める金融業界には、適した品質の映像コミュニケーションを提供できることが強みとなる」(川上氏)。ポリコムでは金融機関の中でも、メガバンクや地方の有力銀行を対象に専任の営業チームを作ってアピールしていく方針だ。
Polycom アジア太平洋地域 アドバンステクノロジ担当シニアディレクター Nick Hawkins氏
ポリコムではブラウザからでも映像会議を展開できるソフトウェア「Polycom RealPresence CloudAXIS」を提供している。従来のハードウェアベースの映像会議システムは会議室など部屋に設置し、コミュニケーションするもの。
パブリックとプライベートの両方のクラウドでも利用できるRealPresence CloudAXISは「従業員全員が利用できるものを目指している。ポリコムの技術を使うことでAESの暗号化による高セキュリティの実現などは従来の品質を踏襲する」(Polycom アジア太平洋地域 アドバンスドテクノロジ担当 シニアディレクター Nick Hawkins氏)ことを特徴とする。金融業界に対しても、顧客との資産管理相談、ミーティングでの活用、人材採用への活用などの事例とともに紹介していく計画だ。