#3:Bob Muglia氏の後任になっても、誰からも反発されなかった
Nadella氏は、皆から愛され、尊敬されていたBob Muglia氏からサーバおよびツールビジネス部門の責任者の座を引き継ぐことになった。Muglia氏がその職を辞したのは、同氏がクラウドに「全力」を注いでおらず、Microsoftのクラウド製品が注力に値するほど成熟していると信じていなかったためだと世の中では受け止められている。人望のあるリーダーの後を引き継ぐのは難しいが、Nadella氏に対する反発はどこからも起こらなかった。Muglia氏が避けようとしていた方向に舵を切ったにもかかわらずだ。これこそが優れたリーダーのしるしと言えるだろう。
#4:「Azure」を軌道に乗せた
「Windows 7」がセキュアで高速、かつパフォーマンスの高いOSになったのは、Microsoftで最も成功したサーバOSであり、その仮想化機能(特にソフトウェア定義によるネットワーク)において、「VMware」に勝るとも劣らない性能を発揮している「Windows Server 2012」の開発と連携したおかげである。この開発と同時に、AzureはNadella氏の指揮の下、ビジネス顧客が実世界で要求するサービスと大きく乖離した最小限のものから、巨大で自動化の進んだデータセンターの効率性を活用するパワフルな手段に変貌した。これにより顧客が必要とするサーバ能力をずっと安価に提供する一方で、ウェブサイトやデータのホスティング、あるいはその他のPaaSタスクを気軽に試せるというメリットをも提示できるようになった。
現在、Azureは3週間ごとに新たな機能をリリースし、クラウド市場においてどこよりも多くの顧客をホスティングし、Appleの「iCloud」からサムスンの「Smart TV」、NBCによるオリンピックのストリーミングに至るまでを下支えしている。Azureは「Office 365」(これもNadella氏の下でもたらされた成果物だ)とともに、クラウド市場におけるMicrosoftの申し子であり、BuildカンファレンスではAzureとの関連を想起させないものなどほとんど見当たらなかった。
#5:「デバイスとサービス」の道を開いた
同氏はCEOに就任した日に、「デバイスとサービス」という戦略を説明した。この戦略はSteve Ballmer氏が「One Microsoft」という旗印の下に行った2013年の組織再編以来、「ソフトウェア」という言葉(これは皆がMicrosoftを連想する言葉だ)を用いて人々に説いて回っていたものだ。ただ、デバイスという言葉は、単に「Surface」や「Xbox」を指していたわけではない。これは常に、現在われわれが使っているさまざまなデバイス(「Amazon Kindle」から「iPad」「Android」携帯、そしてランニング速度を検出する靴下のようなウェアラブルデバイスに至るまで)すべてにおいて重要な役割を担おうとするMicrosoftの取り組みだったのである。そして、サービスという言葉はOffice 365やAzure、Bingのような、Microsoft自身の単なるサービスを指していたわけではない。これは常に、他のサービスとうまく連携するということだったのである。なお、他のサービスとの連携の例として、「iPhone」上の「DocuSign」アプリを用いてOffice 365上の文書に署名するといったものが挙げられる。
Ballmer氏は「デバイスとサービス」というビジョンの幅広さを明確に説明できなかった。一方、Nadella氏は「Office for iPad」からCortana(「Windows Phone」デバイス上でのBingサービス)に至る複数の具体的な製品の発表とそのリリースを実現した。