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IPv4枯渇やサイバー攻撃対策が追い風--A10の小枝社長

怒賀新也 (編集部)

2014-04-24 07:30

 ここ2、3年のスマートフォンやタブレット端末の普及により、インターネットのトラフィックが急増しているのは常に指摘されている通りだ。

 今後も、動画コンテンツの増加などによってスマートデバイスによるトラフィックが引き続き伸びると予想されているだけでなく、モノのインターネット(Internet of Things)に代表されるような波も押し寄せることで、ネットワークへの負荷はさらに大きくなってくる。

A10 Networks日本法人の代表取締役社長兼最高経営責任者でアジア パシフィックジャパン担当バイスプレジデントも務める小枝逸人氏
A10 Networks日本法人の代表取締役社長兼最高経営責任者でアジア パシフィックジャパン担当バイスプレジデントも務める小枝逸人氏

 トラフィックをうまくさばく裏方の仕組みがなければインターネットの活用方法はこれ以上前に進めなくなることもあり、ネットワーク負荷の高まりに合わせ、それを制御するシステムも進化している。

 このうち、従来はロードバランサと呼んでいた領域が、現在はアプリケーションデリバリコントローラ(ADC)と呼ばれるようになってきており、そのADC市場でここ数年存在感を見せている企業の1つがA10 Networksだ。日本法人の代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)であり、米本社のアジア太平洋 と日本を担当するバイスプレジデントも務める。

100Gbインターフェースの優位点は、大容量バックボーンへの接続性確保や、ファイバインターフェース数やコストの削減などだ
100Gbインターフェースの優位点は、大容量バックボーンへの接続性確保や、ファイバインターフェース数やコストの削減などだ

 同社のADCはすでに日本の大手通信企業やECサイトに多く導入されており、ヤフーや楽天などもユーザーだという。4月17日には、100Gbポートを4ポート搭載した新製品を発表し「さらに大容量なトラフィックに対応できるようにした」。従来はあまりなかった100Gbインターフェースを実装した理由は、複数存在していたファイバインターフェースを削減して1つにまとめられることや、大容量バックボーンへの接続性を確保できることなどだ。



IPv4枯渇、サイバー攻撃などで高まるニーズ

 小枝氏は、今後の市場環境について自社に追い風が吹いていると強調する。具体的には、トラフィック規模の大容量化、IPv4の枯渇とIPv6への統合、サイバー攻撃の増加などセキュリティ関連の3つの要因を挙げる。

 今後、コンシューマーのウェブ活用に動画が占める割合が増えてくることによって、バックボーンのネットワークを大容量化する必要が出てくる。

 また、IPv4の枯渇とIPv6への統合も大きな市場だ。43億と言われるIPv4は2011年に枯渇すると言われてきた。NATを使ったプライベートアドレスなどでやりくりしているが、ゆくゆくはIPv6に統合をせざるを得ない。

 これに対して、A10はグローバルIPアドレスを複数のユーザーで共有するサービス、IPv4アドレスをIPv6でトンネルする機能、IPv6クライアントからの接続をIPv4に変換するもの、IPv6とIPv4という両方のネットワークを共存させる製品などを展開している。

 IPv4の延命、IPv6への統合などトラフィック増加で企業が迫られる課題への具体的な解決策を多岐にわたって持っている点が強みと言える。

 このほか、現在市場が盛り上がってきたSoftware-Defined Network(SDN)でも、ADCをSDN環境に統合して負荷に応じて動的にADCのリソースを管理できるようにしている。

 小枝氏によると、従来はインターネットサービスプロバイダー(ISP)や通信企業が顧客として大きな割合を占めていたという。だが、今後は金融機関などを含めた大企業、学校法人、政府機関などを狙っていきたいとする。

 「3月末に終了した第1四半期では40社以上の新たな顧客を得た。A10の伸び代はエンタープライズ領域」(小枝氏)。生産管理システムやオンライントレーディングシステム、データベース分析、メールなどのシステム向けにも訴求対象範囲を広げる考えだ。

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