日本オラクルは4月24日、業種別の課題解決策などを紹介するイベント「Oracle Industory Leadership Summit 2014」を都内で開催した。先日就任会見を開催した杉原博茂社長とともに、米Oracleのグローバルビジネスユニット エグゼクティブバイスプレジデント、Robert Weiler氏が基調講演を務め、ITを軸にしたビジネスの今後を業種横断的に展望した。
Weiler氏は、世界の全産業の売上高は71兆ドルあるとする一方、そのうちITが占める割合が2兆ドルに過ぎないと指摘した。その上で「IT投資のその2兆ドルがなければ、残りの70兆ドルの売り上げが成り立たない」と話す。
米Oracle グローバルビジネスユニット エグゼクティブバイスプレジデント Robert Weiler氏
「小売業におけるPOS(販売時点管理)システムがなければ消費活動も滞り、証券取引所やオンライン証券もITなくしては1つのトランザクションも処理できない」(Weiler氏)
以前との違いとして、現在は企業向けIT投資が1兆ドルであるのに対して、消費者市場も1兆ドルと、消費者の支出が企業向けと並んでいることにあるという。1995年にBill Gates氏率いるMicrosoftが「Windows 95」を発売したころまでは、1つの家庭に1台のPCがあるという状況すら誰も想像できなかったとする。
現在は、PCだけでなく、スマートフォン、タブレットが普及し、インターネットとモバイルが一体となり、人々の生活の中心に位置づけられるようになった。
こうした背景から、Weiler氏は“オムニチャンネル”や“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”、ソーシャルへの対応といったキーワードを挙げ、ITが世界の経済や社会、暮らしに与える変化を展望する。
オムニチャネルの台頭
小売業では、ネットの閲覧者を実店舗に呼び込む、いわゆるO2O(Online to Offline)、あらゆる販売チャネルを通じて顧客に対応するオムニチャネルの動きが、米国の産業自体を大きく変え始めているという。例えば、Wal-MartやWallgreenといった小売り企業が、血液検査で病気のなりやすさを判定するといった「セルフテスト」のようなサービスを手がけるようになっている。
これは、来日中の米Obama大統領が実施する「ObamaCare」とも呼ばれる医療制度改革などでヘルスケア業界全体が変わりつつあるという背景もあるが、さまざまな販売チャネルを統合するオムニチャネルの施策が変化を引き起こす格好になっている。
さらに「Wal-Martの店舗数は全米で1万であるのに対して、Vodafoneは1万4000店舗。通信企業が小売業者になっている」とも指摘。オムニチャネルの台頭で小売り、銀行、製造、金融といった従来型の切り分け方では実態が把握できなくなってくる傾向を説明した。
Weiler氏はオムニチャネルについて「オンラインにせよ店舗にせよ、複数のチャネルの在庫情報を1カ所で管理することが鍵になる。その上で、顧客にとって特別な商材を、顧客の行動や在庫を把握しながら、プロモーションを打つことなどが重要だ」と話している。
基調講演の最後に登壇したセブン&アイホールディングス代表取締役社長兼最高執行責任者(COO)の村田紀敏氏も、オムニチャネルへの取り組みを強調。池袋の西武デパートで、美容カウンセリングのサービスをオムニチャネルの仕組みを使って実施していることを紹介した。ネットで予約後、デパートに来店してカウンセリングを受けて化粧品を決定、そのうち65%が商品をセブン-イレブンで受け取っているという。
この取り組みから「多チャネル化で潜在ニーズを掘り起こせること、一人ひとりのニーズを把握することが重要であると分かった」(セブン&アイ)と分析している。
OracleのWeiler氏はITを推進しているトレンドを紹介した。