三国大洋のスクラップブック

アップルの次の“ブロックバスター”製品--そのビジネスモデルを考える - (page 2)

三国大洋

2014-04-25 08:00

 数年前から、Michelle Obama大統領夫人が先頭に立って「Let's Move!(身体を動かそう!)」という肥満対策のキャンペーンを続けてきていることや、Michael Bloomberg前ニューヨーク市長が炭酸飲料メーカーと一時期ケンカしていたことなどは見聞きしていた。

 だが、こういう数字を見せられると、ああした動きの背景にある事態の深刻さを改めて思い知らされるという気がする。病気の原因となりそうなことは少しでも減らしたい。使えるものならどんな手を使ってでも…といったところだろうか。


[First Lady Michelle Obama Wants You to Show Her How You Move]

 

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「気になるビジネスモデル」の手がかり

 いろんなものが含まれるはずの健康医療分野を十把一絡げにして「7兆1000億ドルだ」「2兆9000億ドルだ」などといっても仕方がないのは当然だが、それでもたとえば世界のエンタープライズIT市場の規模――Gartnerから1月に「2014年のエンタープライズ向けIT投資額が合計で2兆7500億ドルに」といった予想も出ていた――と比べれば、この分野が相当取り組み甲斐のある市場であることが感じ取れる。Appleで開発中とされる「Healthbook」アプリについては

Healthbookは、心拍数、血圧、体重、酸素飽和度、呼吸数、血糖値など、多数の身体情報をモニタリングできるものになるという。また、血液や水分状態、身体活動、栄養、睡眠も記録する。

といった話がすでに出ている(『アップル「Healthbook」アプリの新情報か--画像などを9to5Macが公開』)。情報元の9to5 Mac記事には同アプリのUI予想図も出ているので気になる方は参照いただきたい。

 しばらく前に「Appleがスマートウォッチを手がけたとしても、たいした規模の事業にならないのではないか」云々と書いていた。今みると、あの記事には、たとえば次のような“皮算用”がある。

 ちょっと皮算用してみると、既存製品のPebbleやNike+ Fuelbandがだいたい150ドル程度で、アップルプレミアムを載せられるとしてiWatchの値段を1個200ドル、そして粗利率を50%とすると、100ドル/個×1億台=100億ドル(9300億円くらい)。iPad mini(329ドル~)の粗利率が約3割とすれば、1台の粗利は110ドル…

 この“粗利率”の部分について考えるヒントとなりそうな情報が、先頃Forbesサイトに掲載された「The Quantified Other」と題する記事に出ている。スマートサーモスタットのNest、そしてフィットネストラッカーのFitbitやJawboneに焦点を当てた、この記事のポイントは「各社が集めたデータを活用して『行って来い商売』を手掛け始めている」というところ。

 “行って来いの商売”とは製品を購入するユーザーのほかに、別のところからの収入源もある、といったことだが、AppleがiPhoneで約5割の粗利率を実現できたのも(少なくとも米国の場合は)この“行って来いの商売”のモデル――200ドル程度の購入代金に加えて、携帯通信会社の負担する販売補助金があったから(日本で普及している割賦販売も、これに分類されるかどうかはよく判らない)。

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節約分を分配--サーモスタットとフィットネストラッカーの共通点

 Nestのビジネスモデルについては2014年初めに(Googleが買収した際に)多少詳しく記していた。

 よく「デマンドレスポンス」などと呼ばれる類いの取り組み――電力ピーク時の消費量を節約し、それを通じて浮いた分の金額を電力会社とユーザー、Nestとが分け合うというもので、Nestは購入者から受け取るハードウェアの販売代金以外に電力会社からの収入も期待できる。

 前記のForbes記事には、「サーモスタット1台あたり年間30~50ドルをユーザーに払い戻ししている電力会社もある」あるいは「電力会社からの収入がまとまった額になるのはまだ何年も先」「それでも、サーモスタットは一度購入、設置されれば、その後長い間使われ続ける(=Nestには放っておいても、お金が流れ込んでくる)」などといった記述がある。

 この記事で一番目を惹くのは、実は電力分野でのデマンドレスポンスと同じ類いの取り組みが、すでに健康医療分野でも行われているというところだ。

 たとえば、BP America(エネルギー関連大手BPの米国支社か)では2013年に従業員や配偶者、それに退職者(引退したOB/OG)などあわせて2万4000人にFitbitsの「Zip」という製品――リストバンドではないが、歩数、移動した距離、消費カロリなどを記録できるという――を無料で配布し、運動量(歩数)などのデータを集める取り組みを始めたという。

 この取り組みでBPが狙っているのは、会社側が負担する健康保険料(health care premium)の抑制。Fitbitと協力しながら同様の取り組みを進めている企業としてAutodeskやTokyo Electronの名前も挙がっている。さらに、そうした法人向けの需要が旺盛で、数千個単位で割引販売するような例も増えているという。

 Fitbitと競合するJawboneが昨夏に買収したBodyMediaでは、同社製のアームバンドを使って、従業員の健康データ(発汗量、活動量、体温など)をモニターする実験プログラムを大手保険会社のCignaと実施した。

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