日経ビックデータラボは4月22~23日、ビックデータに関するシンポジウム「Big Data Conference 2014 Spring」を開催した。活用事例や知見などをビックデータ活用企業や研究者が公開している。
「インダストリアル・インターネット」と題したキーノートセッションでは、米GEのソフトウェア部門 最高マーケティング責任者(CMO)John Magee氏が登壇し、ビックデータ収集による資産の最適化、オペレーションの効率化について話した。
米GEソフトウェアCMO John Magee氏
IoTによるシステムの総合管理で、運用効率を図る
“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”が注目され、さまざまなものがネットワーク化されるようになった。センサを通じてあらゆるデータを収集することができ、データを解析することがもはや必須となってきたとMagee氏は語る。
「インターネットが誕生して20年以上を経たことで、ネットはもはや当たり前のものとなり、ビジネスのあり方や消費者の購買行動を変えるまでとなった。ビックデータとアナリティクスは、インターネット誕生以来の大きな波となり、次のパラダイムシフトを起こしていく」
企業のビックデータ活用の1つは、あらゆる機械のデータを収集し、システムの最適化ができることだ。例えば、運行中の航空機のジェットエンジンや燃料、操縦システムの状況をセンサを通じて分析することで、メンテナンスを最適化できるほか、システム、サービスが停止しているダウンタイムを避けることも可能だ。
「電力やガスなどのインフラ管理、航空機や交通、生産工程に関して運行状況や部品の状態をインターネットを通じて総合的に管理すること、これこそがインダストリアル・インターネットという考え方だ。航空機や医療機器などの製造業を手がけるGEにとって、円滑な稼働や素早い補修、燃料節約を改善するという課題を解決することは、大きなイノベーションである」
データとアナリティクスを活用し、システムを効率化するための技術投資をGEはこれまで実施、オペレーションの最適化を通じてコスト削減や資源消費を減らすことに成功したという。こうした取り組みは、企業インフラのみならず、さまざまな業種に応用可能とした。
データ分析は、未来を予測する
これまで、エンジニアがメンテナンスのスケジュールを決め、すべてを一律でチェックしていた。しかし、ドライバーによって自動車の利用シーンや使い方が違うように、インフラ設備も使い方によって、故障箇所やチェック時に重点すべき点は変わってくる。ユニークな製品不良のパターンがある際、データを回収し解析することで、過去から学び未来を予測することができるという。
「アナリティクスを通じ、これまで故障対応に対して後手になっていたものが、未来を予測することで事前に対処可能になる。もはや、アナリティクスにより何が起きたか、何が起きているのかの先である『これから何が起きるのか』を知ることができるのだ。企業の意思決定にも大きく影響する。これは、歴史的にも大きなシフトとなるだろう」
データをもとに最適なオペレーションを遂行すると、ユーザーにもよりよいサービスを提供することができる。GEが関わっている病院では、あらゆる機材にセンサやタグを搭載し、ベットや機材の稼働率や全般的なスループットが可視化され、患者の待ち時間を減らし、効果的な病院運営に成功しているという。
インダストリアル・インターネットはイノベーションを創発する
これからの企業はデータとアナリティクスを前提としたビジネスを考える必要があるとMagee氏は語る。工場やフロアマネージャーも、データを理解し生産性を向上させるため取り組みを担うことが求められる。
「クラウドの誕生により、今まで得られなかったデータを使った低コストで高パフォーマンスのサービスを受けられるようになった。もちろん、データだけがあっても仕方がない。データサイエンティストというビジネスへの橋渡しの存在が必要であり、従来にはない新しいスキルを持った人材が今まさに求められている」
ビックデータ時代において、データだけを見るのではなく、データの持つ意味や、文脈を理解し適切な意思決定に活かすための分析の重要性が増している。データから有用な情報を抽出し、そこからアクションにつなげることが求められるのだ。データとアナリティクスを軸に、新しいビジネスモデルの構築が必要とされるとMagee氏は語る。
IoTが発達することで、機械そのものだけでなくアプリケーションの発達が求められ、新たな情報サービスが今後誕生してくる。「IoTは、今後ますます大きなトレンドになってくる。もはや、IT業界だけでなく産業界全体に変化をもたらすものだ。インダストリアル・インターネットを理解し、そこからより多くのイノベーションを創発してもらいたい。そこにビジネスチャンスは潜んでいる」