企業の行動がガラス張りに
「技術進化の波は顧客接点を変化させました。そのために企業はその再構築を迫られています。ただし、1つ気をつけなければいけないことがあります。ソーシャルメディアの浸透で、企業の行動がガラス張りになったということです。企業にとって都合の悪い、表にしたくない事実を隠そうとしても、ムダなことだと覚悟を決めることです。もし顧客接点の再構築を実現しても、今までのように自社にとって都合の良い情報だけをアナウンスするだけというなら逆効果です。顧客をコントロールできるという発想そのものが炎上の原点となるからです。」
池田氏は斉藤氏の指摘にうなずきながら、CxOクラスの人たちのソーシャルメディアに対する認識の変化について次のように話す。
「IBMはかなり前から経営にソーシャルメディアを活用しており、顧客との接点の改善をすべきだと提案してきました。しかし、正直言って、数年前まではCxOクラスの人たちのソーシャルメディアに対する認識は希薄だと感じることもたびたびあったんです。“若い人たちが熱中しているのはわかるけど、それを経営に生かすというのはどうもイメージがわかない” といった感想ですね。でも、いまやそういう経営層の方は少数派ではないでしょうか」
顧客の理解と社員の自律性が、魅力ある体験を創り出す
ループス・コミュニケーションズ代表取締役社長の斉藤 徹氏
今回の調査を通じて、IBMは「魅力ある顧客体験をデザインする」こと、特に、デジタルメディアにおける体験の重要性を説く。そしてこのことは、顧客パワーを経営に生かす道にもつながるものだ。
斉藤氏はこの「魅力ある顧客体験」について次のように話す。
「前回の調査ではソーシャルメディアが、今回の調査ではモバイルが、経営者が重要視するテクノロジとして浮かび上がっています。ある金融企業の役員のコメントがそれを的確に表現しています。“われわれがモバイル技術に投資しているのは、個々の顧客の置かれた状況と要望を理解し、それに基づいてテーラーメイドの体験を提供するためである”。さらに言うと、スマートフォンやタブレットの登場でバーチャルとリアルの境界線があいまいになり、企業はそれを前提とした体験を創りだす必要性に迫られています」