IBM Global CxO Studyを読む

顧客をコントロールできなくなった今、世界の経営トップは何を考えているのか - (page 4)

大西高弘 (NO BUDGET) 怒賀新也 (編集部)

2014-05-08 07:30

 池田氏も、今回のCxOへの調査で、新しい顧客接点構築において、デジタルメディアの活用が大きくクローズアップされたと指摘する。

 「ソーシャルメディアやモバイルからのビッグデータを活用して顧客理解を深めることが技術のトレンドとなるでしょう。例えば先端企業はソーシャルメディア上のデータを活用し、顧客の価値判断基準を理解した上で、生活の中のイベントを把握しようとしています。ソーシャル技術の活用から得られるリターンは大きいということが広く理解されれば、さらにデジタルメディアの活用が進むでしょう」

 斉藤氏は、さらに共感される顧客体験の大切さを説く。

 「魅力的な顧客体験を創り出すために、顧客理解を深めることは大切です。社会の成熟化で、顧客は機能価値だけでは満足せず、商品やサービスに情緒価値を求めるようになりました。今、彼らが求めているのは感性に訴えるブランドです。ビッグデータ活用で顧客理解を深めるとともに、人々に共感されるような顧客体験を提供することが大切になったのです。それを実現するためには、顧客接点を担う現場社員が、自発的に共感行動を取れる組織に改革する必要があります。心に響く顧客体験を提供できると、その人が歩く広告塔となって、その体験をネット上の友人に広く告げてくれる時代なのです」

 社員が自律的に動く組織の重要性は、2012年調査において「価値観の共有を通じて、社員に権限を移譲するべき」と提言されていたことだ。顧客に経営参画してもらうには、単なる顧客中心型の組織ではなく、顧客と共創型の組織を構築することが大切だと今回の調査報告でも提言されている。人々の緊密な繋がりを前提とした経済「コネクテッド・エコノミー」においては、社内外を透明にすること、それによって人々のコラボレーションを促進することが成功への鍵と言えるだろう。

ループス斉藤氏のメモ

 顧客の期待値は上がり続け、忍耐力は下がり続けるだろう――これは調査に書かれたあるCIOの言葉です。デジタルメディアの浸透によって、顧客の影響力は年々高まっています。顧客の声は可視化され、その企業は共感されているのか、嫌悪感を持たれているのか、人々はすぐに判断できるようになりました。

 顧客が大切でないという経営層はいませんが、組織が大きくなると社内論理が優先されがちです。もう一度、顧客の立場で自社の顧客接点を再点検してみませんか。貴社にそういう意識がなくとも、すでに競合他社は動きはじめている。それを感じさせてくれる意義深い調査結果でした。次回記事は、同調査から、デジタルと実世界との融合について、そしてそれに関連した日本企業の回答にスポットを当てたいと思います。

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