経済産業省はデータの開示を通してビジネスの活性化を促そうとしている。だが文書は良質なものであっても文字と図の羅列が多くビジネスで使いやすいとは言い難い状況だ。
経済産業省 大臣官房広報室は昨今「情報公開の明確化」に注力し、文書を1枚の絵でまとめるなど可視化する取り組みを始めている。今回、同様の取り組みでいわゆるオープンデータを促進している経済産業省 大臣官房広報室に話を聞いた。
貿易の歴史をグラフィカルに表示
経済産業省 大臣官房広報室は4月21日、経済産業省が保有する情報をオープンにしていくプロジェクト「OPENMETI」を公開した。今回公開したコンテンツは、通商産業省が発足した1949年以降の予算、法律など全政策が記録されている「年報」がダウンロードでき、1988年以降の年報から「日本と世界の貿易」をその年の「景気動向指数」「政策」「予算」などの観点から月~年単位でビジュアライズしたコンテンツ。
日本経済の変化と歴史を記録した3万ページ超の記録をベースに構成され、必要な年代について世界と日本の輸出入の記録を見られる。電子政府構築事業の一環として経済産業省のオープンデータ施策やデータの利用促進を目標としたものという。
オープンデータを活用して欲しい
産業競争力強化法のインフォグラフィックス
経済産業省 大臣官房広報室は昨今、いわゆる「お役所資料」とも言われるテキストだらけの文書をイラストやデザインにより直感的に伝えるための手法「インフォグラフィックス」で表現している。この1月に施行された「産業競争力強化法」も企業の創業期から衰退期、発展期までを1枚の絵で表現しどの時期に、どの政策で対応するかを示している。より政策に興味を持ってもらうのが狙いだ。
「誤解を与えないことを大前提とし、大容量のテキストや数字を抽象化してデザインすることで、役所の文書をより一般に受け入れ易い形で見てもらえようにした」(担当者)
今回のOPENMETIも着眼点は同様だ。「データをオープンにして状況を理解できるようにしたい思いがある。どんなことがあったか興味を持っていただき、実際に調べられるコンテンツを提供したかった。文字や図をインフォグラフィックス化したように、データも一目で分かるコンテンツとして公開すれば、興味を持つ人が増えるのではないかと考えた。政府が公開している情報は非常に多いが、統計などのデータから知見を得られるかどうかはまた別の話なのではないか。本当に役に立っているのかという問題意識があった」(担当者)
今回は電子化されていない経済産業省の年鑑データを基にビジュアルで表現した。もともと、日本経済の歴史の一部をデータで可視化しWikipedia を見ても載っていないような歴史と政策、予算をワンセットで提供できる資料として選定したという。
「多様なデータをオープンにしているので、それを活用するツールの策定やビジネスの着想に生かしてもらいたい」と担当者は語る。OPENMETIにより、データに関する議論が活性化していき、一般からのフィードバックによりオープンデータ施策の精度が上がることを期待しているとした。
現在、政府のオープンデータから着想を得たビジネスとして、農林水産省が公開している農薬データベースをもとに農作業や育成記録をクラウドで管理できる「アグリノート」など国内でもオープンデータをビジネスに使う事例が出てきている。公共サービスでは、自治体の税金の使われ方が年収ごとに分かるサイト「税金はどこへ行った?」なども現在、132自治体のサイトが立ち上がっている。