モノのインターネット
それはもはや、Salesforce1やKickstarterプロジェクトの範囲には収まらない。モノのインターネット(IoTと省略される)産業というのは、企業が扱っているネットワーク対応の物理的実体が対象であり、取り組むだけの価値があれば、考えられる限り最小のものまで含まれる(しかし、時にはその価値がない場合にも対象になっているのではと筆者は考えている)。こうした実体(デバイス)は、クラウドを見つけて接続する機能を最初から備えており、実体そのものの場所や向きに関するデータや、そのほかの有益な定量的および定性的データ(健康状態、利用状況、バッテリ残量など)を送信するように設計されている。
小規模な企業でも近いうちに、低消費電力のネットワーク対応装置(そのほとんどはビジネスに役立つ日常的な製品)を数え切れないほど持つようになる可能性がある。そうした装置によって、組織化、最適化、さらには再編成や再構成、裁定取引を、以前は実現できなかったような方法で行えるようになる。建物や工場、輸送手段はすぐに、こうした機器を備えるようになるだろう。サプライチェーン全体や小売店、病院も同様だ。
クオンティファイドエンタープライズ(企業の定量化)
われわれは個人の生活の中で興味のあるデータを記録するために、歩数計や「Fitbit」「FuelBand」「Withings」などのデバイスを使っている。それと同じことが、企業の中でも以前から行われてきた。ただし、これまでは在庫管理システムやRFIDなど、かなり高価値のものや重要資産に対して行われてきた。クオンティファイドエンタープライズはそうではない。すぐに使えるツールが存在し、企業における「モノのインターネット」を中心として、はるかに細かく大規模な形で分析やビジネスインテリジェンスを実行できる、という考え方を表しているのだ。
ここで指摘されるべき点は、測定できないものは管理できないという問題が、長年のビジネスの現実としてあったことだ。そのため、企業データから、ビジネスの物理的状態についての基本的真実にいたるまで、企業内で実際に起こっていることの大部分が見えなくなる、つまり「闇に包まれて」しまう。クオンティファイドエンタープライズを構成するアプリケーションや装置によって、従業員は文字通り、現在起きていることを十分に見極めて、それを元にビジネスのマネジメントや管理、最適化を行うことが可能になる。
最後に言いたいのは、Theo Priestley氏が2013年にWiredで書いていたように、従業員も、この新しい職場環境の一部として不可欠な存在だということだ。それは、「組織の価値は、その従業員全体(のデータ、例えばデジタル的な)の評判の総和によって決まる」ことが分かっているからだ。
新しい世代の(大部分はモバイルの)分析ツールやビジネスインテリジェンスサービスが登場して、従業員が組織の完全な機器化を実現させ、その組織の測定や分析を行い、有効に活用するようになることを期待しよう。