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昨日と同じITではつまらない--経営者に提案していく:アバナード 安間社長 - (page 2)

大川淳 山田竜司 (編集部)

2014-05-08 19:29

--エンジニアが不足すると言われている2015年問題をどうとらえているか。

 これまでの潮流から考えて変革の1つとも言えるのではないか。1964年に(IBM製メインフレーム)「System/360」が誕生し、1974年にSystem/360のOSである「MVS」が投入された。それ以来40年になるが、現在でも、MVSは「z/OS」のコアであることに変わりはない。System/360がまずメインフレームの社会を築き、MVSが以降のIBMのビジネスフィールドを改革した。

 1985年にMicrosoftが「Windows 1.0」を発表して、その後のIBMとMicrosoftが牽引するITの流れを決定づけた。1997年にはSteve JobsがAppleに復帰し、同じ年にGoogleが起動している。2007年には「iPhone」が登場している。こうしてみると、1964年、1974年、1985年、1997年、2007年とITの世界がどう進むかという潮流に大きな影響を及ぼす出来事はおおむね10年ごとに起こっているのではないか。

 伊勢神宮の式年遷宮は、20年に1回作り替えられるが、1つには、建築技法上の問題であり、そのくらいのサイクルで建て替えないと土台が腐ってしまうというのが理由だ。もう1つは、技法を次世代に伝承するためだ。これは、ITでも同じだと思っている。

 10年、20年というような単位でITに大きなイベントがあり、技術が変革される。これまでの10年サイクルでみると2015年、2017年、2020年といったあたりで従来なかったような大変革が起きたり、新しいものが出現したりするかもしれない。

--日本企業向けに新しい取り組みを進めるには。

 提案先を経営者にすることだと考えている。年間のIT投資のうち6~7割が運用保守という現状を変えたい。アウトソーシングは1980年代からその有効性が喧伝されたが、ビジネスになったのは20年後だ。モバイルワークも言われ続けて10年。クラウドもコスト変動に強く、やめたいときにやめられるというビジネス的な価値を見出したのは経営者の存在が大きい。

 不景気になったときのコスト構造を思い出してほしい。56%の役員クラスは可能性のあるメリットに投資することを重視する一方、55%のITリーダーは可能性のあるリスクを最小化することを重視する傾向にあるというデータがある。IT部門長と話をすると保守的な話になることが多い。私は経営者に会いに行って経営を変えるサポートをしたい。新しい技術や事例の話になると身を乗り出して聞くのは経営者の方々だ。昨日と同じITではつまらない。IT部門は昨日と同じことをするのが仕事だと考えてはいけないと思う。

--海外のトレンドは。

 われわれのビジネスでは現在、アジアを中心に「Microsoft Dynamics AX」(ERP)の引き合いが強い。海外展開している日本企業の小さな拠点での導入が進んでいる。アジアのマネジメントは強いトップダウン。ソフトやパッケージはカスタマイズすることなく、従業員はそのまま使えという文化だと感じる。このため、他のMicrosoftツールとの親和性も高いことや更新の手軽さから人気を呼んでいる。日本に比べて工数そのものが少ない。

--社内の取り組みでユニークなものは。

 社是である「Passion for the Technology」の通り技術が好きでその領域に自信がある人材が多い。このため、自慢の技術で「こんなのを作った」と見せ合う「イノベーションデイ」を社内に設けており、好きな領域でアプリケーションを作って投票する仕組みがある。投票には役員も参加する。グローバルにこのような取り組みを持ち、各国の知見を集めて独創性があるとも言える提案ができる点は強みであると言える。

--今後どんな会社にしたいか。

 Avanadeはグローバルに展開しているため、全世界の知見を応用でき、MicrosoftとAccentureが持つ見識を使える強みを持つ。このような部分は大事にしつつ、もっと教育に力を入れたい。間違えをきちんと修正する仕組みを会社に埋め込むこと。目標オリエンテッドな会社を作りたい。トレーニングコストをきちんとかけるためにも会社を大きくするつもりだ。技術をたくさん取り込んで顧客をわくわくさせるような提案をしていきたい。

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