大衆化しつつある飛行機での国内移動
今から5年ほど前までは、ベトナム国内を飛行機で移動する人はビジネスマンであっても数少ないという印象がありました。例外は、ハノイとホーチミンの間で、この区間は「統一鉄道」という名のベトナム縦断鉄道で結ばれているものの、片道約30時間もかかりビジネスで使うには現実的ではなく、以前から飛行機の利用が前提でした。
それ以外の都市を仕事で移動するビジネスマンが多くなかったこともあり、ハノイやホーチミンに次ぐ規模でベトナム中部最大の都市であるダナンを例に挙げても、5年ほど前は、ハノイ~ダナン線、ホーチミン~ダナン線の機内には空席も目立ち、予約をとるのもいたって容易でした。
しかし、ベトナムでもここ数年の「エアアジア」や「VietJet Air」といった格安航空会社(LCC)が躍進しています。そのため、以前は高根の花であった航空機の利用が徐々に一般化しつつあり、ビジネスマンはもとより、これまで乗り合いバスを乗り継いでいた帰省時であっても、飛行機を使うことが増えてきています。
ハノイ~ダナン線やホーチミン~ダナン線でも、国籍を問わず搭乗客が非常に増え、便利な時間帯の航空券は正規料金のエコノミーかビジネスクラスのものでないと購入できないといったケースも珍しくないほど混雑するようになってきました。
変わりつつあるベトナムの交通インフラ
都市間輸送では、飛行機利用に加え高速鉄道計画もあります。日本の新幹線を導入するのは費用対効果に見合わないため、ベトナムの国会が行政府に計画の再考を求めたようですが、それでも高速鉄道の導入に向けた調査が続けられています。
また、都市内輸送でも、ハノイやホーチミンにおける地下鉄建設やバスの高速輸送システム化などのプロジェクトも進行中です。これらの大都市では、渋滞の列に連なる自動車の数が増えてさらなる渋滞を引き起こすという悪循環が続いたため、一部交差点の左折(ベトナムは左ハンドルなので、日本の右折に相当します)禁止や立体交差化が進められています。都市部での渋滞解消はベトナム当局も解決するべき問題ととらえているため、このような道路行政に加え、自動車登録費用の値上げといった対応を取っているところです。
一方、街中の公共交通機関はバスに限られてしまいます。ガソリン代が1リットル当たり約120円程度と高価であるのに比べると、バスの運賃ははるかに廉価な上に、最近は車内で無料Wi-Fiが利用できるようになったりしています。しかし、定時性も悪く大変混雑するため避けられる傾向にもあり、「地下鉄だけできても、駅前まで行く交通手段がないから、結局は目的地までバイクで出かけちゃうかも」というベトナム人の笑い話もあります。
いずれにしても、ベトナムでは交通システムの改善にいろいろな取り組みがなされています。ベトナムでバイクの洪水が見られなくなる日も近いのかもしれません。
- 古川 浩規
- インフォクラスター
- 内閣府及び文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:国立大学法人 電気通信大学 非常勤講師、日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、財団法人 日本・ベトナム文化交流協会 理事