また、中にはかなり否定的な見方もあり、GigaOM主筆(ただし今は現役引退してベンチャーキャピタリスト)のOm Malikなどは次のように書いていた(かなり極端な例かもしれないが)。
- Googleは32億ドルで未来とデータを買った(1月に発表したNest買収を指す)。それに比べると、Appleが32億ドルも出して買おうとしているのは、出来の悪いヘッドフォン(を作るメーカー)と音楽プロモーターの作ったダメなサービス(だから会社としてお金の使い方が下手)
- Beats Audio(Beats Musicのこと)を金で買うというのは、Apple社内で新しいアイデアが尽きて、対Spotify戦略を考え出せないことを示すいい証拠
1番目の点については、Bloomberg Westのビデオでも紹介されていたりする(9分50秒あたりに出てくる)。
Appleには使い切れないほどたくさんの資金があるのだから、「どうせならSpotifyを買った方がいいんじゃないか」(Spotifyは定額制ストリーミング分野の最大手で有料加入者数約1000万人)、「わざわざ別のブランドを買わなくても、ヘッドホンくらいなら自社でもっといいものが開発できるんじゃないか」といった至極ごもっとも指摘もある。
そもそも「Appleにとっては32億ドルという金額自体が小銭程度」――「今のAppleは1週間で10ドル程度の利益を生み出しているからBeatsに32億ドル払っても3週間分にしかならない」というMarc Andreeseenの指摘も一部でよく引用されていた――だから「もっとアグレッシブにいろいろ買収した方がいい」、あるいはもっと具体的に「Netflix(時価総額200億ドルくらい)やSquare(推定評価額50億ドル前後)ぐらいでも大丈夫だろう」などといった話さえすでに出ている。
Apple generates ~$13.5B cash per quarter; = ~$1.04B cash per week. Can pay for Beats with 3 weeks of generated cash.
— Marc Andreessen (@pmarca) 2014 5 9
スポーツや音楽と結びついた“ライフスタイル”ブランド
[Dr. Dre Lebron James Beats By Dre Power Beats Commercial]
この原稿を書きながら、YouTubeにあるBeatsのチャネル(Beats by Dre)を観ていて改めて感じるのは、Beatsが提供している本当の売り物は“ある種のライフスタイル”ではないか、といったことだ。
ブラックミュージックやダンス、それにスポーツ(特にバスケットボール)などが欠かせない構成要素となっている、このライフスタイルについて簡潔に言い表す言葉の持ち合わせがないので歯がゆいが、CMに起用されている有名人――LeBron James、Kevin Garnet(いずれもNBAのスーパースター)、Colin Kaepernick、Richard Sherman(2人とも2014年のSuper Bowlに出場したNFLのスター選手)、それにPharrell(Williams)やNicki Minaj、Lady Gagaといった日本でもお馴染みの音楽アーティストなどの名前を挙げれば、その感じが少しは伝わるかもしれない。