--こういった多様なアイデアが実現された背景にはハッカソンがあるとうかがったのですが、どのような取り組みなのでしょうか。
一般的にハッカソンは“何か新しい価値を生みだすことに取り組むイベント”ですね。アイデアを創造するには、1人より2人、同業種だけより異業種の人たちと意見を出し合った方が「殻に固執しない」アイデアが生まれる可能性が高くなると思います。そういった何かを造りたいと思っている人たちが集まり、一定時間集中して考え、アイデアを形にするイベントです。
一般的なハッカソンでは“つくることがゴール”ですが、われわれは“ビジネスを創造する”ことを目的としている点が異なります。われわれは年に1回Twilioのハッカソンイベントを開催していますが、このイベントの優勝者や優秀者の事業化を支援しています。
--事業化の支援というのはどのような支援でしょうか。
技術サポートやビジネスマッチングの場を提供します。親会社がKDDIということもあり幅広い業種の方とのマッチングをサポート可能です。また、われわれが主催する各種イベントなどでも露出する機会を提供しています。直近の例では最優秀賞に輝いた「実践クラウド」が「Web&モバイルマーケティングEXPO」という展示会に出展するのですが、当社からは説明員を派遣するといった形で支援しています。
--なぜ、ハッカソンに取り組もうと思ったのですか。
Twilioが生まれた米国でハッカソンが開催されていたというのがまず1点。日本でも同じ取り組みをしようと思ったのは「未知の体験」を伝えるための、良い手段が他になかったからです。
Twilioの「電話とウェブをつなぐ」というコンセプトは、なかなか理解されないのです。電話とウェブは「まったく別物」と思われていますから。昔電話しかなかった時代があって、今はそれがウェブに置きかわった。だから電話なんて古いものだというような。
電話とウェブ、それぞれのサービスを企画する人たちの間にはそんな隔たりがあります。その2つがつながるようになると「便利になる、面白くなる」と語ったところで興味を持ってもらえません。
そこで、直接Twilioを宣伝するのではなく、ハッカソンをしたいという人にTwilioという部品を使ったサービスを作ってもらい、そこから自然と口コミで広げるという戦略を考えました。
--「ハッカソンをしたい」という人がいるんですか。
そうですね、ハッカソンは米国のスタートアップでは盛んです。ハッカソンはスキルの高いエンジニアやデザイナーが集まるので、質の高いエンジニアにリーチするのに効率が良いのです。また、そのイベント自体が楽しいこともあり、ハッカソンが開催されるとなると「ハッカソンに参加することに意義がある」という目的で集まる人がいます。
中には、ハッカソンに参加しすぎて「ハッカソン疲れ」を起こしている人もいるようです。
--勉強熱心な方が多いですね。ハッカソンの効果はありましたか。
当初の狙い通り認知の拡大につながっています。まだ世の中にないコンセプトを世の中に訴求するには広告では上手く伝えられなかったと思います。ある参加者がハッカソンイベントに参加して「電話とウェブがつながると、こんなに面白い」とコメントしてくれました。そして体験がFacebookやTwitterでシェアされる。その投稿を見た友人の方が次のイベントで参加してもらえる。こういう「未知の体験」を広告で伝えるのは難しかったんじゃないでしょうか。
また、認知の拡大という以外にも活用例が集まるという利点があります。Twilioは「部品」ですから、利用方法はユーザーに考えていただく必要があります。ここに紙とはさみがあったとして、そこから何を生みだすのはユーザーによって変わります。ある人は紙飛行機を作って遊ぶかもしれませんし、葉書を作ってメッセージを誰かに伝えようとするかもしれません。
ハッカソンの場で多様なアイデアが集まり、具体化されることはTwilioにとっても、ユーザーにもメリットがあると思います。
--なるほど、ハッカソンで色んなアイデアに触れ、そこからヒントを得て新たなビジネス創出につなげるということなんですね。