ここで、日本企業のアンケートから、この点で参考になりそうな意見をピックアップしてみたい。
『お客様の持つスマホを通じ、インタラクティブに顧客情報を取り込んでいきたい。顧客とセールスドライバーの1対1の関係を作り、新しいサービスを提供していきたい』(ヤマトホールディングス 執行役員 小佐野豪績氏)
『モバイルは旅行の販売チャネルにとどまらない。予約前から現地での行動までの継続的な顧客接点となり、あらゆる体験を提案できるプラットフォームになる』(エイチ・アイ・エス 執行役員 高野 清氏)
さらに池田氏は、リアルとデジタルの戦略統合において、ソーシャルメディアの効率的な活用だけでなく、プラットフォーム戦略をしっかりと取り入れていくべきだと話す。
「多くのユーザーを集め、継続的に活用されるプラットフォームを運営するプラットフォーマーは、圧倒的な情報優位性を持ちます。サービスを提供するサービサーに踏みとどまるのではなく、もっとプラットフォーマーへの意識を持つべきだと思います」
顧客接点の再構築とプラットフォームの可能性
池田氏に日本企業のプラットフォーム戦略を例に挙げてほしいとお願いすると、バンダイナムコゲームスのケースを挙げてくれた。
「バイダイナムコゲームスでは『機動戦士ガンダム』シリーズのコンテンツ、製品などをすべて統合してプラットフォームを構築しています。プラモデル販売、ゲームソフト配信、各種ネットワークコンテンツや業務用ゲーム機、カードゲームなど関連のサービスが統合されており、ユーザーは共通のアカウントで多面的なエンターテインメント体験を享受できるのです。顧客接点を統合することで、こうしたプラットフォームを構築できる日本企業はもっと多くあるはずです」
斉藤氏は、この問題について日本企業の多くが抱える組織的、人的な問題を指摘する。
「強固な縦割り組織、それを打破するためのリーダーシップ不足がネックとなって、プラットフォーム構想を実現できないケースが多いのではないでしょうか。大組織の部門間が協力せずに部分最適に走る、いわゆる『サイロ化』は世界共通の課題です。ただし、日本企業の場合、世界でも独特の終身雇用制が存在するため、管理職がアガリのポジションになってしまうことが多く、組織を超えた変革を起こしにくい特徴があります。日本企業にとって、縦割り組織の打破は、真の顧客志向を実現するために最重要な課題となっていると考えています」