中国経済の先行きには強気になれない
中国経済の問題は、中国がまだ完全な資本主義国になっていないことに根ざしている。中国は、もともと社会主義国だった。1980年代に資本主義革命を進め、社会主義の国家体制を残したまま、実質的に経済のしくみを資本主義に近づけていった。その結果、現在、社会主義と資本主義が混在している国になっている。
社会主義では、国家がすべての経済を管理していた。「計画経済」といわれるものだ。中国の公共投資には、今でも計画経済の考え方が一部残っている。「鉄鋼生産を増強する」「高層住宅の供給を拡大する」「資源開発を進める」などの方針をいったん決めると、経済環境が変わってもやり続けることがある。特に、中国の地方政府が行う公共投資や、一部の国営企業の設備投資にその傾向がある。
鉄鋼在庫が過剰でも、マンション供給が過剰でも、石炭などの資源が過剰でも、計画通りに投資が進められることがある。民間企業ならば、計画を中止するところで、ブレーキがかかりにくい。通常は銀行が金を貸さなければ、無謀な投資は行われなくなるものだが、銀行を通さない「理財商品」などを通じて、資金供給が行われていることが、問題を深刻にしている。
中国政府は、この問題に気づいていて、長期的に過剰投資を抑制する構造改革を実施すると表明している。ただし、急に景気が悪化すると社会不安が起こるので、少しずつ調整していく方針だ。最近は、国内情勢を考慮して、投資の上積みに動いている。過剰投資を容認しながら、長期的に構造改革を進める難しい舵取りを行っているわけだ。
中国には、将来有望な分野もある。それは個人消費の成長だ。中国では、今まさに富裕個人が増加している。中国のGDPの約半分は消費だ(政府消費も含むベース)。消費は、政府の計画によって行うものではなく、個人の自由意思によって行うものだ。それが、本格成長期を迎えている。
窪田氏は、中国GDPの半分を占める消費が年率10%の成長を続けることは無理ではないと考えているという。つまり、消費だけで中国GDPは年率5%成長できることになる。しかし、中国政府のGDP成長ターゲットは、7.5%。直近の成長率は7.3%くらいだが、構造改革に真剣に取り組むならば、5%成長くらいに落とすことが適正だろう。中国は、危うい高成長を続けていると考えられる。
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