同社は強欲で邪悪な顔を持つ企業として悪魔扱いされるようになっているものの、農業という業界に大きな革命をもたらした。しかも、創業時には農地に足を踏み入れてさえいなかったのである。
Monsantoは1901年に創業した化学会社であり、DDTや牛の成長ホルモン、PCB、人工甘味料を販売していた。しかし1980年代にMonsantoは種苗会社を買収し始め、バイオテクノロジの研究に投資し、戦略的に農業企業への転換を図った。そして1996年、初めての遺伝子組み換え製品「Round-up Ready soybean」(ラウンドアップ耐性大豆)を生み出したのだ。この製品は米国では人気を博したが、欧州では遺伝子組み換え作物(GMO)の使用を非難する声があったため、さほど普及しなかった。
GMO、そしてMonsantoのGMOに関するマーケティング戦略は、すべてビッグデータと農業の次のフェーズを見据えたものであった。このことを次に見ていきたい。
Monsantoは、農場における種まき時の間隔や深さ、そして根系に関して農業従事者を支援するハードウェアとソフトウェアの開発元であるPrecision Plantingを2012年5月に買収した。そして2013年10月には、気象情報の分析を行うサンフランシスコの新興企業The Climate Corporationを約10億ドルで買収した。さらに2014年2月、The Climate Corporationは土壌検査サービスを提供するサンフランシスコのSolumを買収した。
Monsantoの主要ソフトウェア製品であるFieldScriptsは、土壌の生産性と収穫量を判定するためにこれらすべてのシステムと連携できる。
The Climate Corporationの最高執行責任者(COO)Greg Smirin氏は「5年前に農業分野に進出し、深く関わってきたことで、農業従事者の操業を根本から守るための支援を行ってきた。こう言うと、口先だけのように聞こえるかもしれないが、彼らは実際に極めて具体的なものを必要としているのだ」と述べ、The Climate Corporationの2つの柱が、農業従事者に対する収穫保険を用いた異常気象からの保護と、データ分析による収穫量の向上であると付け加えた。
Monsantoに対する悪いイメージは、同社が抱える訴訟問題や、不正だとの主張もあるロビー活動、GMOに対する保護、これらすべてによって時折引き起こされる一般大衆の誤解によって生み出されたものだ。世界最大の種苗販売会社であり、農業分野において市場最大の独占を誇っているこの企業に対する信頼の欠如は重大だ。
Monsantoのプレジデント兼COOであるBrett Begemann氏は「データの保管が安価になり、プラットフォーム間のデータ移送が容易になるなか、われわれは精密農業という分野が急成長を続けていくと考えている」と述べるとともに「われわれはこうしたツールを用いることで、農業従事者に対して生み出せる価値すべての探求に取りかかったところだ」と述べた。
同社は一般大衆が気付くずっと前にこの分野の可能性に気付き、それに賭けたのだ。人がMonsantoを信頼するかどうかにかかわらず、同社が農業分野のトレンドを資本化する方法を手にしていることは間違いなく、データは次なるターゲットとなっている。
Hackney氏は「ブランド管理という観点から見た場合、Next Big Thingはデータである。では、市場で勝ち抜くにはどうすればよいのだろうか?悪名を馳せたブランドであれば、他のブランドを買収し、すべてをひとまとめにしてしまうのが理にかなっている」と述べている。