不確実な時代への適応が一層求められる時代に
グローバルで俯瞰すると、経営層は顧客やテクノロジーの大きな変化をすでに察知し、自らを変革しようとしていることがわかった。では、日本の企業はどうなのだろうか。Japan Reportのデータに基づき、斉藤氏はこう語る。
「日本企業だけに限ってみるとどうなのか。経営に影響を及ぼす外部要因を見ると興味深い傾向がわかります。例えば“グローバル化”の重要性について、海外のCEOが7位としたのに対して、日本のCEOは3位としています。多くの海外企業がグローバル化に目処をつけ、顧客体験の創造にシフトしている中で、日本企業は依然としてグローバル化に手間取っているのです。テクノロジに対する感度の低さも気になるところです。日本企業は、グローバル化やテクノロジを取り込みながら、同時に顧客体験の創造に着手しなくてはいけない状況にあると言えるでしょう。顧客体験それ自体、国境も端末もなくなっていることが特徴でもありますから」

一方、池田氏は、次のように述べる。
「これはIBMが過去、調査に基づく提言として挙げたものですが、不確実な時代の中においては、変化への俊敏な対応力が極めて重要であることが明らかになっています。企業が顧客をコントロールできない時代は、いわば何が起こるか分からない時代です。企業によって置かれている環境は違いますし、グローバル化も大切です。しかし、顧客体験の構築は同時にすすめるべき最重要課題なのです」
斉藤氏は、今回のまとめにあたって、「企業が持つDNA」の重要性を指摘する。
「昨年のIBM Global CEO Study 2012から導かれた3つの提言は“価値観の共有を通じて社員に権限を移譲すること”“個のレベルで顧客に応対すること”“パートナーシップによってイノベーションを増幅すること”でした。今回の調査では、CEOのみならず、全経営陣がこれらの実行を通じて「新しい顧客体験を創造すること」を目指していることが分かりました。社員や顧客、パートナーのつながりを深める経営、その核となるのは企業の持つDNA、経営哲学です。生活者に愛される企業となる鍵はここにあります。顧客が企業を上回るパワーを持った時代に、世界の経営陣は一丸となって、このパラダイムシフトへの適応に取り組んでいるのではないでしょうか」