オープンなデータに向けた努力
2014年の初め、パーデュー大学におけるオープン農業技術グループのAaron Ault氏が、データ収集プロセスに第三者の監査機構を組み込むというイニシアティブを提唱した。Open Ag Data Allianceは、このようにして生み出された。同プロジェクトの目標は、農業データにプライバシーとセキュリティをもたらすことである。
Ault氏は「システム内で誰が何をいつ見るのかというのは、農業従事者によって完全に統制されなければならない」と述べたうえで、「現在ほとんどの農業従事者はサービス利用規約の内容をよく知らないため、(われわれは)彼らが契約前にその内容を把握できるようにする手段を作り上げているところだ」と語った。
Jones氏の農場の土壌検査を実施するHelena Chemicalの関係者たち。
提供:Lyndsey Gilpin/TechRepublic
Ault氏はインディアナ州で専業農家を営む一方、パーデュー大学で各種の研究に従事してもいる。同氏は農業を独自のオープンソースプラットフォームであると捉えている。農業従事者は発明家であり、パイオニアでもある。彼らは自らの知識や農作物を近隣の人たちと共有してきた。しかし、どういうわけかその進歩のなかで、農業データの収集と共有がいらいらするほど難しいものとなったのである。
同氏は「その理由の1つに、現状では連携がうまくいかないという点がある」と述べたうえで、「ある会社のものが他社のものとは連携できず、データの取り扱い方法についても提供されているものと、いないものがある」と説明した。
典型的な例がJohn Deereのシステム「Apex」だ。これは他のブランドの製品やシステムのほとんどと互換性を持っていない。また、Hackney氏(同氏の会社はパーデュー大学のOpen Ag Technology Groupの筆頭スポンサーだ)の調査で明らかになったように、John Deereの契約書には同社がすべてのデータを所有するというプライバシー条項が含まれている。
Smirin氏は多くの農業従事者が使用してきている従来のシステムについて「だんだんと知られるようになってきたことだが、彼らが信頼している会社であっても、自らのデータすべての完全な所有権を与えてくれていないところもあるのだ」と語った。
さまざまなクラウドサービスが登場しては消えていったが、The Climate Corporationのサービスは最も信頼できるものであった。そして、Monsantoはこの新興企業を買収した数カ月後、彼らが作り出そうとしていたOpen Ag Data Allianceへの注力を表明した。
Begemann氏は「われわれは農業従事者が自らの作り出したデータを所有するという点を強調するとともに、彼らに対して無償で基本的なデータサービスを提供し、他のプラットフォームを通じたデータ共有を無償で可能にすると約束する」と述べた。
Open Ag Data Allianceに参加している主な組織は以下の通りだ。
- パーデュー大学のOpen Ag Technology Group
- AgReliant Genetics(種苗会社)
- CNH Industrial(農機具販売)
- GROWMARK(農業協同組合)
- Valley Irrigation(高精度のかんがいテクノロジ機器メーカー)
- Wilbur-Ellis Company(フィールドテクノロジ製品販売)
- WinField Solutions(種苗供給者)
- The Climate Corporation
Smirin氏は「The Climate Corporation自身にも追い求めている目標がある(中略)われわれは自らのサービスを、農業従事者のための最善のものとして使ってもらいたいと考えている。しかし、彼らが自身のデータを保管するという基本的なデータサービスのみを必要としているのであれば、われわれから見えないところにそういったデータを保管すると約束する」と述べたうえで、「これは当たり前のように聞こえるが、まだ一般的になっていないプラクティスなのだ」と語った。
またAult氏は、この連合の推進にはMonsantoが大きくかかわっているものの、プロジェクトの主導権をどれか1社が握るということはないと述べた。
Ault氏は「これは愚直に聞こえるかもしれないが、Open Ag Data Allianceのアプローチの一部には、この組織が意味することの共通言語を定義するという目的もある」と述べた。
この業界ではうわさはすぐに広まる。信頼が裏切られた場合、そのことがコミュニティー全体に知れ渡ってしまうのだ。
Ault氏は「われわれはこの問題を解決し、信頼を勝ち取り、システムをセキュアにする必要がある」と述べるとともに「これを単なるリップサービスにせず、第三者によって評価できるようにし、データへのアクセスについての疑問をなくす必要がある」と述べた。