*****
[Hill Said to Offer $1.2B for Clippers; Ballmer Bids - Bloomberg TV](5月29日付のもの。LAC入札合戦の話題のすぐ後に、AppleのBeats買収とCode Conferenceの話題が出てくる)
以前にSprintのT-Mobile買収の動きに絡めて、NBAチームのLACの争奪戦の話に触れた(『スプリントとT-モバイルを合併させるにはLAクリッパーズを買収すべし』前編、後編)。このLACが、どうやらSteve Ballmer(Microsoft元CEO)の手に渡ることになったようだ。
「BallmerがLACの現オーナー側に18億ドル(媒体によっては20億ドル)の条件を提示」といった見出しの記事を目にして、この原稿を書き始めたが、そうこうしているうちにESPNからアラートが飛んできて、「Ballmerが契約調印」「買収金額は推定20億ドル」「下馬評の高かったDavid Geffenらの投資家グループが出した16億ドルという条件をBallmerの条件が上回った」などと書かれている。
ちなみに、20億ドルというチームの買値はNBAでは過去最高(これまでの記録は4月に譲渡が決まったMilwaukee Bucksの5億5000万ドル)、またメジャースポーツ全体でも2012年のLA Dodgers(MLB、21億5000万ドル)に次ぐ巨額の取引となる公算が高い。Ballmerの個人資産額はForbes推定で現在ざっと200億ドル――Ballmerの退任発表後から続くMSFT株価の値上がり(約2倍弱)で、個人資産も以前よりだいぶ増えているのはなんとも皮肉なもの。
今週初めには「Ballmerが交渉の窓口となっている現オーナー夫人と接触」「チームのシアトル誘致にはこだわらない」などと発言したことも伝えられていたが、事態が予想以上に急展開した背景には、「LACをNBAに取り上げられる前に、既成事実を作っておきたい」という現オーナー側の思惑があったらしい。NBA側がこのチーム譲渡を承認するかどうかなどはまだわからないが、「下手に長引かせるよりも、譲渡を認めて早めに決着を付けた方がいい」という判断をコミッショナーや他チームのオーナーらが下したとしても不思議はない状況。
CEOを退いて以来どうも暇を持て余しているらしいBallmer――最近出ていたWSJとのインタビューでは「Stanfordで講義を聴いている」「ゴルフの腕が上がった」などとも述べていた――がLACを手に入れたとすれば、文字通り“物言うオーナー”となって、金に糸目を付けずにチーム強化に乗り出すというのも想像に難くない(子息が通う高校のバスケ部を指導していた、というのも割とよく知られた話だが、まさかコート上の細かいことまでは口出ししないだろう)。
Ballmerと“ご近所付き合い”の関係にあるSeattle Seahawks(NFL)のヘッドコーチであるPete Carrollが、この件で「Ballmerはものすごく負けず嫌いだから……LACは運がいい」などと事前にツイートしていたが、SeahawksのオーナーでもあるPaul Allen(Microsoft共同創業者)が所有するNBAチームのPortland Trail Blazersが、伸び盛りの若手選手を中心に力を付けてきていることを考えると、Ballmerが「Paulのところにだけは負けるな…」という風になったとしてもやはり不思議はない。
The Clippers would be so fortunate to get Steve Ballmer as owner. He's a great competitive force & would bring big energy to the LAC fanbase
— Pete Carroll (@PeteCarroll) 2014年5月28日
この件でもうひとつ興味深かったのは、LAC買収に名乗りを上げたとされる別の投資家グループの中に割と馴染みのある意外な名前が並んでいたことだ。