SAPPHIRE NOW 2014

B2Cに本気で取り組むSAPの狙い

怒賀新也 (編集部) 2014年06月04日 11時21分

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 「ドイツ優勝を信じています」

 SAPの展示ブースで説明した20代の女性は言い切った。サッカードイツ代表の秘密兵器が、自分が務めるソフトウェア企業が提供していることからくる自信なのかもしれない。

 SAPは米国時間の6月3日、年次ユーザーカンファレンス「SAPPHIRE NOW + ASUG Annual Conference」を3日間の予定で米フロリダ州オーランドで開催させた。テーマは「Run Simple」。最高経営責任者(CEO)のBill Mcdermott氏は、企業が取り組むべき最も大きな課題は複雑性への対応だと強調。顧客体験をシンプルにしていくことが重要だと話した。

ブラジルワールドカップでドイツ代表は画面をベースに選手の動きをHANAで分析するシステムを導入している
ブラジルワールドカップでドイツ代表は画面をベースに選手の動きをHANAで分析するシステムを導入している

 初日の朝から始まる基調講演の前から展示会場は盛況だった。注目を集めていたブースの1つに、サッカードイツ代表が勝利するために導入した分析システムだ。選手の動きを画面上で視覚的に把握し、選手ごとのパスの成功回数や疲労度などを、インメモリデータベース「HANA」の高速な分析力を利用して把握する取り組みだ。

 ドイツ代表は実際に導入しており、ブラジル開催のW杯開幕を間近に控えた優勝常連国ドイツのブレーンとして、このシステムへの注目度は自ずと上がっている。

CEOを務めるBill Mcdermott氏。5月にJim Snabe氏との共同CEO体制を解消したが、この日それには触れなかった
CEOを務めるBill Mcdermott氏。5月にJim Snabe氏との共同CEO体制を解消したが、この日それには触れなかった

 基調講演では、柔軟なユーザーインターフェースを可能にするツールを無償で提供すること、ファイナンス向けに新サービスを提供することの2つを新たな取り組みとして発表した。このほか、情報系システムのイメージがあったHANAをERPやSCMの予測系エンジンなどいわゆる基幹系のシステム基盤として採用した新たな製品展開が発表されるとの予想もある。

リピートし続けた言葉「シンプル」

 Simpleと言う言葉を100回は使ったのではないかという印象のMcdermott氏の基調講演。企業が持つ仕組みについて「複雑性への対応が最大のチャレンジ」だと指摘する。

 ここで、Simpleの意図を一言で表現すると「クラウド+HANA=Simple」となる。

 クラウドを使うことによって、国ごと、組織ごと、部門ごとにシステムを組む必要がなくなる、つまりシンプルになる。一方、HANAのインメモリ技術を利用した高速な分析能力を活用することにより、従来はハードウェア能力の関係で、都度小分けにしながら分析せざるを得なかったようなデータの大きな塊に対して、処理の複雑性にかかわらず直接分析をかけられるようになる。データマートなどのようなデータ分類が必要なくなり、システムとして簡素化するというわけだ。

 Simpleの流れで、この日は2つの新たな取り組みを紹介した。

 1つは、さまざまなユーザー体験(UX)に対応するためのツールとして2013年5月に発表された「Fiori」とSAPのソフトウェアのGUIをドラッグ&ドロップ形式で変更する「Screen Personas」の両製品をすべてのソフトウェアライセンスに無償で組み込むことだ。

魅力的なUXを実現するFioriを無償提供

 Fioriにより、既存のSAPソフトウェアをより直感的な操作ができるように作り直せるという。既に購入してしまった顧客には、今後購入するSAPのソフトウェアライセンスに適用できるクレジットを配るといった救済策を提供する予定だ。

 「われわれはあらゆるSAPユーザーに最良のUIを使って分析できる環境を提供する。商業的にも成功したFioriについて、無償で利用できるようにするべきとの意見が顧客などから寄せられ、それに同意した」(Mcdermott氏)

 すでに300以上のアプリケーションにFioriのUXが使われている。Fioriを無償化して広く普及させることで、SAPが提供するソフトウェアを顧客それぞれにとってより使いやすいものにし、幅広いユーザーから支持を集めていく考えだ。導入企業として紹介された飲料メーカーのNestleは、入力業務の75%削減に成功したという。

Nestleは入力業務の75%削減に成功した
Nestleは入力業務の75%削減に成功した

 入力作業削減の例は、デモでも紹介された。ある工場におけるメンテナンスシステムで、工場の機械に取り付けたセンサから常にHANAに一定のデータが送付されるようにする。HANAは蓄積したデータを分析することで、工場の機械が故障を起こす頻度や箇所などを割り出す。

 デモでは、メガネ型端末をかけることで、こうした情報を閲覧でき、メンテナンスや交換が必要になったパーツの注文を、頭を振るといった動作で済ませられることが紹介された。製造業に限らず、さまざまな分野に応用できる技術と言える。

FioriとSAPのソフトウェアのGUIをドラッグ&ドロップ形式で変更するScreen Personasの両製品をすべてのソフトウェアライセンスに無償で組み込む
FioriとSAPのソフトウェアのGUIをドラッグ&ドロップ形式で変更するScreen Personasの両製品をすべてのソフトウェアライセンスに無償で組み込む

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