コンシューマー向けビジネスを強化
この日、Mcdermott氏やSAPのエグゼクティブボードであるBernd Leukert氏が、注目を集める発言をした。
「SAPはコンシューマーを対象にしたビジネスを意図的に開始している」
B2Cビジネスを展開する企業にB2B企業としてソフトウェアを提供するなら、あまり珍しいとは言えないが、あくまでも「意図的にC向けのビジネスを積極的展開する」考えであるのは、エンタープライズソフトウェア企業のイメージが強い分、メディアからも驚きの反応があった。
背景には、モノのインターネット(IoT)が今後急速に普及するとの予測があるようだ。自動車産業やスポーツなど、さまざまな産業のさまざまなモノが今後インターネットにつながり、センサを経由して通信をし始めるといわれる。冒頭で紹介した、ドイツ代表の事例も今後のコンシューマー向けビジネス拡大を予測させる事例だ。
SAPのエグゼクティブボードであるBernd Leukert氏
「IoTにより、ビジネスはますますサービス化する」(Leukert氏)
インターネットにつながることにより、公共建築物の監視や病人の看護の一環として実施するモニタリングなどが、効率的に実施できるようになる。こうなると、モニタリングのためにデバイスを販売するという従来型のビジネスよりも、モニタリングするというサービス業務の方が息の長い、利幅の大きな事業になるというわけだ。
IoTの可能性を指摘する人の中には、「これからは自動車も無料で配る時代が来るかもしれない」とまでつぶやく人もいる。自動車の動きをモニタリングし、自動車が進む先々でレストランの割引券を提示するといった方法で客を呼び込めばいいという理屈だ。
自動車はともかくだが、他のコンシューマー事業には、この考え方が有効に働く分野がかなり多くありそうだ。
サッカー選手のパフォーマンスをモニタリングするということは、その先には、健康管理や、病気にならないための食事の管理などさまざまな可能性が広がるとMcdermott氏は話す。SAPの狙いは、そのように各業種に入り込み、消費者の利益につながるようなサービスを提供することにある。
テクノロジがきっかけとなり世界中の幅広い産業構造に大きな変化が生まれる可能性があり、面白い動きになってきそうだ。