「確かにグローバル市場では競合と戦っていかなければならないが、IIJが得意とする大規模領域では今のところ、そんなにぶつかることはない。中小規模領域では価格競争が激しくなってきているが、当社としては無益な競争に参戦するつもりはない。今後も得意分野を中心に事業を広げていきたい」
IIJはすでに米国、欧州、中国、シンガポールでクラウド事業を展開しており、国内とともに今後もグローバル展開に注力していく構えだ。現在は全売上高の1割程度に過ぎないクラウド事業だが、すでに利益を生み出していることから、今後は着実なストックビジネスとして計算できるという。IIJならではの事業展開に注目しておきたい。
「クラウド市場をめぐる戦いはまだまだこれからだ」 (日本HP 松浪幹生 執行役員)
日本HP 執行役員 松浪幹生氏
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が先ごろ、企業向けクラウド関連製品やサービスの新ブランド「HP Helion」について記者説明会を開いた。同社の執行役員でエンタープライズグループ事業統括エンタープライズ営業統括クラウド営業統括本部長を務める松浪氏の冒頭の発言は、その説明会で、クラウド市場での競合との戦いについて聞いた筆者の質問に答えたものである。
HP Helionは米HPが5月7日(米国時間)に発表したもので、同社の既存のクラウド関連製品やサービス群とともに、オープンソースのクラウド基盤構築ソフトウェアであるOpenStackをベースとした製品、それにプロフェッショナルサービスやサポートサービスを1つのポートフォリオに統合した形となっている。
最大のポイントは、従来型IT、パブリッククラウド、プライベートクラウド、マネージドクラウドのすべてにおいて、OpenStackとハイブリッドIT実現への取り組みを強化したことにある。HPではこの分野に対し、今後2年間で10億ドル以上を投資する計画だ。
HP Helionのさらに詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは冒頭の発言をめぐる会見での質疑応答のやりとりを紹介しておこう。筆者が質問したのは、今回の発表によってクラウド事業を大幅に強化したHPが、特にクラウド基盤(IaaS/PaaS)事業において、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftといった競合に真っ向から勝負を挑むのか、という内容だ。これに対し、松浪氏は次のように答えた。
「パブリッククラウドの基盤サービスについては、HPは2年ほど前から米国市場で本格展開しており、日本でも一部の顧客企業に利用いただいている。米国市場では価格競争力においても競合に十分対抗できる形でサービスを展開している。今後はこれを日本も含めたグローバルに拡大していく予定だ」
こう語った上で強調したのが冒頭の発言である。どうやらHPも覚悟を持って激戦市場に挑む構えのようだ。