本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、IIJの鈴木幸一 代表取締役会長と、日本HPの松浪幹生 執行役員の発言を紹介する。
「クラウド基盤の品質については世界でもトップクラスと自負している」 (IIJ 鈴木幸一 代表取締役会長)
IIJ代表取締役会長 鈴木幸一氏
インターネットイニシアティブ(IIJ)が先ごろ、2014年3月期の連結業績と事業概況について記者説明会を開いた。鈴木氏の冒頭の発言は、その中で好調に推移しているクラウド事業での同社の強みを語ったものである。
2014年3月期の連結業績は、売上高が前期比7.6%増の1142億円、営業利益が同26.2%減の57億円、最終損益が同16.2%減の44億円。事業全体が伸びたものの、設備投資や人件費などの営業費用が膨らんだことで増収減益となった。
2015年3月期の連結業績見通しについては、売上高が前期比7.6%増の1230億円、営業利益が同25.8%増の72億円、最終損益が同1.3%増の45億円と予想している。
成長領域として同社が注力しているクラウド事業については、2014年3月期の売上高が98億円となり、前期の62億円から58.1%伸びた。大口利用の継続・拡大やサービスラインナップの強化、パートナーとの協業拡大、グローバル展開が好調の要因という。この勢いで2015年3月期は前期比32.7%増の130億円を目指すとしている。
同社が公表した数字で興味深いのは、利用企業数と企業あたりの平均単価だ。利用企業数の過去3年間の推移は、2011年末で700社、2012年末で1000社、2013年末で1160社。この内数として月額50万円超の企業数はそれぞれ100社、190社、220社。そのまた内数で月額100万円超の企業はそれぞれ50社、90社、130社。こうした推移によって、企業あたりの平均単価は2013年末で前年比2割超増加しているという。
ここまでクラウド事業の数字を公表するベンダーは珍しい。しかもこれらの数字はすべてパブリッククラウドによるもので、プライベートクラウドについてはシステムインテグレーション(SI)事業に組み入れているという。非常に分かりやすい実績の示し方である。
そこで筆者は会見の質疑応答で、IIJもこの分野の柱としているクラウド基盤(IaaS/PaaS)事業において、Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftといった世界の競合とどう戦っていくのか、聞いてみた。この答えとして、鈴木氏がまず強調したのが冒頭の発言である。さらに続けて同氏は次のように語った。