Boxの雇用プロセスには、複数のエンジニアが応募者に質問する討論会が含まれている。Boxに興味を持つ大企業のエンジニアや、最先端の新興企業のエンジニアは多い。しかし、Haines氏の目的に適うのは、おそらく2000人から5000人の従業員がいる企業のエンジニアだろう。大企業出身のエンジニアは組織の裏に隠れ、プロジェクトを1人でこなすエンジニアとしての能力に欠けている可能性がある。一方、新興企業出身のエンジニアは、人と接する能力を持っていないかも知れない。「当社に必要なのは、小さなチームの一員になれる人材であり、長い間大きな組織にいて無精癖がついた人材ではない」と、Haines氏は話す。大企業は大規模なフレームワークとサポート体制を抱えており、エンジニアはコードに集中できる体制になっていることが多い。しかし、「Boxでは、空を飛びながら船を造っているようなものだ」(同氏)
CIOの役割
Haines氏は、時間の4割を顧客との対話に費やしているという。「話題の多くはBoxの製品ではなく、クラウドやエンタープライズコンピューティングだ。当社のようにクラウドしか使っていない企業は少ない。そして、当社は大企業と言える規模になってきているため、大企業が抱える問題についても話すことができる。これまでに一番盛り上がった会話のいくつかは、Boxとはまったく関係がなかった」とHaines氏は話す。
それに加え、Haines氏は最高マーケティング責任者との間に、Boxの次のステップや、どのように協力していくべきかを話し合う関係を築いている。また、人事部門や財務部門は、システムが重要であることから、Haines氏が密に協力している部門の筆頭だ。さらに多くのITスタッフを抱える販売部門では、Haines氏の指示に従って整理統合を進めている。「常に会社のためになるように仕事を進めるべきだ。予算がどの部門のものかは気にしない。販売部門や営業部門はIT部門よりも多くの予算を持っており、必要ならそれを使う」とHaines氏は言う。
クラウドベンダーの選択
Haines氏は、クラウドベンダーを選択する際には、大規模な運用に対応できるかどうかを重視すべきだと話す。経験則として言えることは、記録のためのシステムは変更するのが難しいが、業務遂行のためのシステムは交換できるということだ。「IPO後に会計システムを変更することは考えたくないはずだ」とHaines氏は言う。WorkdayやSalesforceが規模拡大に対応するノウハウを持っていることは言うまでもない。NetSuiteも同様だ。また、ベンダーのセキュリティは、Boxにとって優先順位が高く、ベンダーによっては侵入テストを行う必要がある。Boxはすべてのベンダーに対して、300以上の質問項目がある調査票に回答することを求めている。「一部のベンダーは単純に一定水準を満たしておらず、多くの新興企業は大企業にサービスできるようになっていない」とHaines氏は述べている。
ユーザーインターフェース
Haines氏によれば、ベンダーの選択にあたっては、クラウドソフトウェアの品質に加え、ユーザーの使い勝手が重要になってきているという。事業部門のエンドユーザーがユーザーインターフェースを重視することは、CIOが製品の中身に使われているテクノロジを評価することが重要であることを意味している。「先月もあるシステムを評価したが、事業部門はUIが劣悪であることを理由に、このシステムを使いたがらなかった。しかし、このシステムのエンジンは強力であり、少なくともBoxの成長に2年間は耐えることができた。競合ツールはUIこそ美しかったものの、そのシステムが使える期間は12カ月未満だった。これで分かるのは、UIが優れていても、中身が伴わないものがあるということだ」とHaines氏は説明してくれた。