真のイノベーションを起こす3つの条件
継続的なイノベーションを生み出すためには、外部に開かれた組織になる必要がある。しかし、伝統的な歴史を持つ大企業にとってこの変革は容易ではないだろう。
この問いに対して、小鹿氏は次のような体験を話してくれた。3カ年の中期経営計画の策定に苦労していた、売上高1500億円を超えるエネルギー関連企業の話だ。
「会議の現場では、いつもの経営企画担当メンバーが議論していました。しかし、なかなか新規性のあるプランが出てこない。そこで、もっと外部の人間を入れることを提案しました。その結果、複数のコンサルティングファームから多様な専門性を持つ人材が集まり、メンバーの過半数を占めるようになった。当初は社内スタッフも戸惑っていましたが、それから新たな視点が持ち込まれ、経営計画の議論が一気に進み始めたのです」
そこで策定した3カ年の経営計画は、結果的に1年前倒しで達成され、企業としての業績も向上したという。
外部コンサルタントの協力を仰ぐことは珍しくないが、その多くは「各部門が個別にコンサルタントと議論し、ハンドリングするのは社内のスタッフ」というパターンだろう。これでは社外の知見が社内の論理に埋没してしまいがちだ。社外の知見と社内の経験をいかに組み合わせるか。コンサルタント活用にもコツがある。
小鹿氏は、さまざまな組織の改革に関与した経験から、イノベーションを生み出すためには大切な原則があると語る。
「前提条件を取り払う。新たな組み合わせを作る。不安定さを作り出す。この3つがイノベーションを起こす条件だと考えています。同質の人たちが類似した経験をもとに会話をしても、新しいアイデアはなかなか出てこない。イノベーションは必要だと思っていても、未経験な環境に自ら進んで身を置くことはできないのです」
過去に前例のない取り組みを、新しい組み合わせで実行し、あえて不安定な環境でアイデアを繰り出す。安定した環境の中でコラボーションを声高に叫んでも、イノベーションは期待できないということだろう。